アートは身近な文化だ。
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アートは身近な文化だ。

興味深い記事を見つけた。世界一美術展が好きなのは日本人だという。高度成長期に150万人を動員した「モナ・リザ展」やバブル期に53億円で落札された「ゴッホのひまわり」などは、今でも記憶の彼方にはあるものの、今でも「世界一」といった感覚は全くなかった。でも確かに、英美術専門誌「ザ・アート・ニュースペーパー」が発表した2019年の美術展入場者ランキングでは、1日当たりの入場者トップ10に日本の展覧会が3つ入っている。日本は最高順位こそ4位だが、トップ3が入場無料であることから、実質1位と言って良い。さらに上位30位には11もの展覧会がランクインしている。これは世界最多で2ケタ以上あるのも日本だけだ。

一方、記事では、日本人の「世界のアート販売」におけるバイヤーのシェアが現在1%未満であることも併せて伝えている。美術展でのアートの鑑賞人口は多いが、アートを日常生活の語らいの一部に取り込んでいる人は少ないとの指摘もある。日本人の多くは、どうやら「企画展や展覧会に出向く」というイベントとしてアートと接しているのだ。背景には、豊富な所蔵品の中から選りすぐられた常設展を、入れ替えながら魅力度を維持しているルーブル美術館などとは異なり、日本の多くの美術館には、借りてきた有名な美術品を使ったイベント集客に頼っている側面があるという。

そんな日本のアートとの関係も、コロナ禍を経て大きな変化が生まれている。先進国の全てが進めている「異次元」の金融緩和は、多くの資産価格を押し上げ、余剰資金の一部は運用対象としてアート作品にも向かったという。さらに、「映え」や「おうち時間」の充実を求めて、これまでアートに無縁だった若年層の購買意欲をも刺激しているのだ。SNSにアップして『いいね』をたくさんもらった作品の投稿が拡散することで好循環が生まれている。オークション市場もネットをうまく取り込むことで大きく伸びている。「リーマン・ショック以降、長らく低迷していた日本のアート業界は21年に入ってから『第4次ブーム』と呼べるほど景気がいい」と業界関係者は話す。

こうした市場の活性化もあってか、現代アートのEC運営会社のTRiCERAは、第三者割当増資で総額1億9000万円を調達した。現代アートのEC基盤「TRiCERA ART」では、約4800人のアーティストが出品する約3万点の作品を、世界120カ国の顧客へと販売しているという。調達した資金はアジアや北米での顧客獲得に向け、広告宣伝に使うという。代表の井口氏は「アートを買う潜在層に届けたい。顧客が自由に好きなものの価値を発見してほしい」と語る。アーティストの収益化を支援すると共に、日本の日常にアートが根付くきっかけにもなると期待が掛かる。

リアルの拠点でもアートを触れる日常を作る取り組みも始まっている。寺田倉庫が現代アートを扱う複数のギャラリーが入居する複合施設の2号館が昨年オープンした。カフェや中庭を併設して、現代アートを長時間楽しんでもらう空間づくりを進めている。隣の1号館にはアーティストが作品を制作するスペースもある。完全予約制のオープニングイベントでは、42軒のギャラリーが集まり、数百点の作品を展示・販売したところ、4日間で2664人の来場があったという。既に購入した作品を保管するサービスも始めている。天王洲という立地もよく、若手の起業家やアート初心者までの様々な層に支持される取り組みになると感じている。

もっと身近に楽しめるサービスも続々出てきている。例えば、ピカソやバンクシーなどの美術作品を1口1万円で共同で保有できる「ANDART」のサービスだ。購入するとスマホやパソコンから鑑賞できたり、イベントでは実物も鑑賞できるたりするという。有名作品の「オーナー」として自分の名前も刻印されるのが人気らしい。京都市にあるCasieは「手軽にできる模様替え」と謳って、絵画のサブスクサービスを展開している。事前に自分の好みを登録しておくと、1万1000点以上ある作品の中から、Casieが選んだ絵を郵送してもらえる。月額2200円からととてもお手頃だ。まさに、初心者がアートのある日常を楽しむにはもってこいのサービスだと思う。作家に売上の一部が還元されるという仕掛けも素晴らしいと思う。

Casieは、京都信用金庫が開催した「京信・地域の起業家アワード」で見事に最優秀賞を受賞した。アートを身近な文化にしていくサポート体制も充実してきたようだ。これからの広がりを期待したい。

では、アートは感じて、楽しむだけで良いのだろうか。アート文化というなら、受け身から始めたとしても、是非ともアートからの学びを日常の生活に生かしたり、アート文化を自ら育んだりすることも忘れてはいけない気がする。そんなことを思っていた時に、興味深い記事に出会った。

「アートは異なる価値観を学ぶ近道だ」という内容の記事だ。ピカソやモネは厳然たる学問だと言うのだ。さらに、アートは多様な知性で見るもので、感性だけで見るものではないと続く。最初はかなり呆気に取られたが、読み進めるにつれて、少しずつ理解できた。要はそのアートが生まれた背景やメカニズムが必ずあるということ。そしてそのアートが評価されているということは、その背景やメカニズムが評価されていることが多いというものだ。

ハッとした。私自身、常日頃から、上手くいった事業も、上手くいかなかった事業も、それらのメカニズムと一緒に捉えようとしてきた。アートがビジネスと同じと感じた瞬間だった。ピカソが評価されたのは、あの斬新な絵柄だけでなく、「人類の起源であるアフリカから西洋の最先端のアートまで広く取り込んだ芸術様式を作り出した」という評価があったからだという。ピカソの絵だけを見て、その成り立ちやメカニズムを理解することはもちろんできないが、それを紐解いてくれる本や学芸員はいるはずだ。俄然、アート文化に興味が沸いた。どの美術館に通うか考えてみたいと思った。

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由紀ホールディングス社外取締役、ファクトリーサイエンティスト協会理事、慶應大学SDM特任教授、NDMA代表理事、工学博士。 早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガー日本代表、同グローバル共同代表を経て、2020年7月、きづきアーキテクトを創業