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自由である事をやめることはできない

「自粛のやめ時」の判断まで政府の専門家会議が責任を負うというのは、どう考えても筋が違います。彼らは感染学などの専門家なのであって、景気予測や経済分析の専門家ではありません。専門家会議のメンバーには、自らの専門分野の見地にしたがって、何の気兼ねをすることなく、自由に発言してもらうべきです。経済や金融への影響を気にして、結論を曖昧にする必要はありません。

自由な発言が足りないのは、むしろ我々エコノミストのほうだと思います。新型コロナ感染拡大に伴う経済活動の自粛が、空前の大不況を招きつつある実態が、日を追うごとに明らかになってきています。しかし、エコノミスト業界ではもっぱら、経済対策に何十兆円が必要だとか、減税は望ましいのかどうか、金融政策はどうあるべきか、などという議論が活発です。その前に、今後直面するであろう生々しい不況の実態を、率直に伝えるべきではないでしょうか。政治家による最終判断は、その上で行われるべきです。

『新型コロナウィルスの感染拡大による死者を減らすことが出来たとしても、経済的な死者をそれ以上に増やしてしまえば、新型コロナウィルスとの闘いに負けたことになる。』

「経済的な死者」とは、斎藤太郎さんのレポートにある通り、失業などの経済問題を理由とした自殺者のことを指しています。

感染の拡大を防ぐために、政府が経済活動を事実上ストップしてしまえば、企業の倒産が増え、失業者が増加して、自殺者が数多く現れます。この事実は、ほとんどの経済学者やエコノミストが承知しているはずです。

しかし斎藤太郎さんのように、この問題を正面から指摘するエコノミストはほとんどいません。恥ずかしながら、私も指摘できませんでした。批判をおそれ、尻込みし、空気を読んで、とりあえず言わないことにする。所属する組織からこうした発言を止められているエコノミストも、なかには居るのかもしれません。政府の専門家会議メンバーの発言に比べ、経済分野の専門家の発言が自由ではないことが、最終的な政治家の決断を鈍らせ、今後予想される経済的な困難からの脱却を遅らせるのではないでしょうか。

エコノミストがあまり自由に発言できないというのは、実は新型コロナの話題に限った話ではありません。組織に所属した職業エコノミストの運命なのかもしれません。しかし、人は運命の奴隷ではありません。斎藤太郎さんのレポートが、多くの方に読まれることを願います。

最後に、斎藤さんほどのインパクトはありませんが、私からも1点だけ指摘したいと思います。

日本の景気は18年10月にピークを付けたとの判断が定説になってきましたが、そうすると日本の景気後退は既に17ヵ月も続いていることになります。これはリーマンショック時の景気後退期間(13ヵ月)や、ITバブル崩壊の景気後退期間(14ヵ月)を上回っています。さらに、現在の景気後退が今年6月まで続けば、日本の金融機関が次々と破綻し、失業率が一気に上昇した90年代後半の景気後退局面(20ヵ月)に並びます。

したがって、新型コロナ問題が解消さえすれば日本経済はすぐに正常化する、という楽観的な見方は避けたほうが良いと思います。なにせ、新型コロナ発生の1年以上も前から、日本の景気は悪化していた可能性が高いのですから。

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三菱UFJモルガン・スタンレー証券 景気循環研究所シニアエコノミスト。日本経済の分析・予測を担当しています。