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信賞必罰からロイヤリティ経営への変化

 これまでの企業人事には「信賞必罰」の考え方が根底にあり、功績を上げた者は昇給や昇格をさせる一方で、目標が達成できなかった者には、何らかのペナルティ(ボーナスの減額等)を作ることで、組織全体の士気を高めていく方法を採用してきた。しかし最近の研究では、社員にペナルティ(罰)を与えることのマイナス効果は、賞を与えるプラスの効果よりも大きいことが判明してきている。

たとえば、昨年活躍したセールス担当者に対して100万円のボーナスが与えられたが、今年は活躍できなかったため、ボーナスが50万円に減給されるようなケースでは、仕事に対する動機付けでは、減給(ペナルティ)のほうが、負の効果が大きい。人間は、報酬が増える時の喜びよりも、「報酬が奪われる(減額される)」というリスクに対して、過大なプレッシャーやストレスを抱えてしまう習性があり、報酬のレートが高額になるほど、その傾向は強くなる。

米国では、営業成績が上位20%の社員を昇給の対象として、残りの社員には、給与が減給されたり、職を失うかもしれない、というプレッシャーを与える、トーナメント方式の報酬制度を多くの企業が採用してきたが、上位に入れない8割の社員は、仕事に対するモチベーションは下がり、離職率が上昇する。さらに職場の人間関係も悪化することも確認されている。

そこで最近では、人事評価の指標(KPI)を変更、多様化することで、広い社員に様々なロイヤリティを与えていくことが、新たな経営手法として注目されている。 ゲーミフィケーションによるワークスタイルの変革が行われているのも、その一環である。こうした変化の背景には、従業員の心理や行動パーターンをデータ分析により、科学的に解明できるようになってきたことがある。

仕事に対する「やる気」「満足度」「幸福感」などは、これまでの人事管理では把握できなかった項目だが、重要指標として測定の方法が開発されてきている。 米国のコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーが開発した「Employee Net Promoter Score(NPS)/従業員ネットピプロモータースコア」は、自分が勤めている会社に就職・転職することを、家族や友人に勧められるかを示した指標で、NPSメソッドのライセンスを受けた調査会社によってアンケート調査が行われ、その回答によってスコアが判定される。

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NPSの総点数が低い会社は、従業員エンゲージメントが低いことを意味して、やる気の低下、売上の下落、離職率の上昇、悪い口コミの増加など、負の連鎖が続いて、企業の屋台骨を揺るがすことになってしまう。

日本は、先進国の中で最も従業員エンゲージメント率が低いことで知られており、サラリーマンが仕事を楽しんでいない状況が顕著となっている。それが業績に良い影響を与えるはずがなく、エンゲージメントを高めるための施策は、給与制度や福利厚生と並んで、重要視されていくことになる。働き方改革の波と連動して、仕事に対するモチベーション革命は急速に進むことになるだろう。

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