日本が物価・賃金・金利の「3低」から脱するには
資本主義、創り直す 解は「フレキシキュリティー」に: 日本経済新聞 (nikkei.com)
世界が急速な経済成長を遂げる中でも、添付記事にある通り、日本は長期に渡って低金利、低成長、低インフレにとどまっています。そして、賃金低迷と格差拡大に加えて、新型コロナウィルスの影響により、産業間や国間で成長が二極化する「K字型」回復も懸念されています。
これに対し、ハーバード大学のサマーズ教授は、先進国経済が「長期停滞」にあると診断し、積極財政が最も有効と主張しています。そして、ファーマン元CEA委員長と共著の「低金利時代の財政政策の再考」(2020年11月)でも、低金利で国債償還費は低下することからすれば、それを考慮しない「政府債務/GDP」はミスリードとしています。また、政府は予算均衡よりも利払いをGDP比で抑える運営が望ましく、今後十年間は償還費の急騰やGDP比2%以上になるのを避けつつ、成長を促進する分野に焦点を当てた財政政策を行うべきであり、ゼロ金利で不況下における財政拡張は財政の維持可能性をむしろ改善・安定させるとしています。
ブランシャールMIT名誉教授も、2019年1月に公表した「公的債務と低金利」で、経済成長が金利を上回るような低金利の米国では、公的債務は財政コストにはならず、厚生面でのコストも小さいと主張しています。また、同年5月に公表した「日本の財政政策の選択肢」でも、日本は悪性の「長期停滞」にあると診断しており、需要不足で金融政策の限界にある日本では、プライマリーバランス赤字が長期にわたって必要になると主張しています。
さらにイエレン財務長官も、FRB議長だった2016年当時の講演「危機後のマクロ経済研究」で従来の供給側中心の成長理論を批判し、需要不足が低成長を恒久化させる恐れを指摘しており、長期の成長のためにはマクロ経済政策により総需要を拡大し、高圧経済にする必要があると主張しています。そして財務長官になって以降も、2021年1月の上院財政委員会指名承認公聴会にて、低金利下における大規模な財政出動による成長戦略は、財政の持続可能性を改善すると主張しています。
このように、日本経済はかねてから総需要の長期低迷から生じる低インフレ・低成長の問題を抱えており、コロナ化はそれをさらに悪化させ、回復には他国よりも時間がかかる可能性があります。このため、政府は効果的な需要喚起策で成長を実現して、マイルドなインフレを目指すことを明確にする必要があり、そのために財政収支改善のペースを落としてでも、効果的な財政政策で総需要とインフレを後押しするものにすべきでしょう。