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マーケティングの視点はアートの鑑賞を深めるのか?ー #アーティストトレース イベントレポ

「アートシンキングは0~1を生み出す」と言われます。しかし、ぼくはそもそも「0」という立脚点に対して懐疑的です。

アーティストは誰もが「0」から物事を生み出しているのでしょうか?

たとえば、ピカソの作品を見て、背景を調べてみると、さまざまな「過去」から表現を紡いでいることがわかります。

セザンヌやマチスといった先輩画家だけでなく、イベリア彫刻など古代の美術や、そして植民地支配が加速した前世紀、そしてその絵が描かれた同時代の社会などが引用されていることがわかります。

アーティストはむしろ「過去と現在を新しい目で見る」もしくは「過去と現在を新しいやり方で編み直す」ということを絶えず行なっているのではないか。その姿勢から学ぶことは多くあるのではないか?

そのような仮説のもとに取り組みたいと考えたのが、対話型鑑賞とマーケティングトレースを組み合わせた今回の企画でした。

マーケティングトレースと対話型鑑賞の出会い

共同企画をしてくれた黒澤友貴さんは、「マーケティングトレース」というマーケターのための筋トレ方法を考案し、国内の多くのマーケターの学習の場を作り出しています。

彼はぼくの友人である山田小百合さん(日本におけるインクルーシブ・デザインの第一人者)のパートナーで、1年半ぐらい前から時々一緒にお酒を飲む仲でした。COMEMOでも記事を書かれています。

去年の12月に、黒澤さんと一緒に「ビジネスパーソンの学び方」をテーマにしたイベントに登壇した際、「臼井さんがやっている対話型鑑賞とマーケティングトレースって、組み合わせたら何かできそうですよね」と声をかけてもらい、「いつか一緒にイベントやりましょう」と話していました。

年が明け、バタバタと時間が過ぎていたら、いつのまにか新型コロナウィルスの脅威が近づいた3月のことです。「ロックダウンしたらリモートワーク必須になるはずだ」と想像し、オンラインワークショップのノウハウをnoteに書きました。

その記事を黒澤さんが読んでくれて、ツイートをしてくれたところに絡みにいって、今回のイベントを実施する運びになりました。

ZOOMで夜な夜な脱線しながらあれこれと考え、黒澤さんが「まずやってみます」と先陣を切ってプロトタイプを作りnoteを公開します。

その間にぼくは自分が運営している定期購読マガジンの読者の皆さんとオンラインでの対話型鑑賞の方法を探求していました。

それらの成果を踏まえてプログラムを組み、本番を迎えました。

参加者の皆さんの声

当日は20名弱の方が参加してくださいました。「対話型鑑賞がきになる」「広告の仕事をしているから、アートとマーケティング両方の視点が欲しかった」「マーケティングの勉強をもっとしたくて」など、さまざまな関心で集まっていただきました。

実際に参加してくださった方々も感想をツイートしてくださっています。

ちびハム@はんなりマーケターさんは、ツイッターでワークシートを公開してくださっています。

辰巳よしさんは、他の方のワークシートと比較することでより思考力が磨かれていく感覚を語ってくれています。

より詳しい内容については、琴音さんが、生き生きとしたレポートを書いてくださっていますので、詳しくはこちらをご覧ください。


参加してくださった皆様、本当にありがとうございました。

まとめ

アーティストは0〜1を生み出すのではなく、過去を参照することから新たな時代に応答している

これはぼくの仮設でしたが、あらためて「ピカソをマーケティングトレースをする」というこのイベントから、ピカソがいかに過去を学び、複数の文脈を新しく組み合わせる方法を試行錯誤しているかがわかりました。

そして、複数の文脈の組み合わせが誰からも賞賛を得るようなものではなく、それまでの規範を逸脱し批判される「リスク」を伴うものであることも見えてきました。

また、マーケティングのフレームワークを用いることで、このような思考はぼくたちにも応用できるかもしれないという可能性も見えました。

例えば、このコロナの中でも、過去から学びうることはたくさんあるはずです。

実際に「シアターコモンズ」というプロジェクトでは、ペスト時代の演劇や、天然痘に応答するダンスなどを見つめなおすことから、この時代に応答できることを模索するトークイベントなどが行われています。

こんなふうに、過去のアート作品からぼくたちが学びうることはまだまだあるはずですし、アートは仕事や生活に生かすということ以上に、生きる好奇心をそそるものであることを、たくさんの人たちと共有していきたいと思っています。

第二回開催もご期待ください。

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