流行っていることを目的が曖昧なまま始めたら、勝ち目は薄い。DXも同じ。
この数十年間、いつもビジネス界には、関心を集める情報技術のテーマが存在しています。
20年前には、「ERP(統合基幹業務システム)」がもてはやされ、導入すれば経営効率が格段に高められて、競争に勝てる魔法の道具が入手できると、注目を集めていました。
今となってみれば、効率化は推進されど、事業が差別化されて強くなるわけではないことを経験し、効果は限定的だと認識されています。
数年前に流行した「ビッグデータ × AI」も同様ではないでしょうか。
既存の大手企業の事業に横たわる課題群を全て解決できる玉虫色の技術は、そうそう存在しません。
そんな中でも、特にDX(デジタルトランスフォーメーション)は危険度が一段と高いです。デジタルという言葉は、情報技術全てを包含できるため、対象範囲も目的も無限に拡張できます。「ERP」や「ビッグデータ × AI」と比べても、万能感に溢れた語感があります。
経営陣が何ができるかを知っていることは前提
Facebookのマーク・ザッカーバーグCEO、アルファベットのラリー・ペイジCEOなど、米国のテック企業の経営トップはコンピュータサイエンスの学位を修めているケースが多いように見えます。
彼らのように情報技術によって何が実現できるか知っていれば、自分達の事業ドメインにおいて、どんな価値が創出できるかを容易に発想できるようになります。反対に、何ができるかわからないものを活用することは困難なため、目的の設定すら心許なくなります。
流行している技術の適応範囲を、自社にあわせて現実的に議論ができるようになることは、成功の前提条件になるため、意思決定を行う経営陣の情報技術への理解は必須となります。
DX成功の鍵はデータ活用力
DXの流行の背景には、スマートフォンの生活への浸透があります。
仕事でもプライベートでも日常的に利用できるデジタルデバイスの発展と共に、あらゆる情報、サービスをデジタルで提供することが可能となりました。
例えば、出退勤情報を紙に打刻していたとしたら、そのデータを活用するのには一手間掛かります。それをスマートフォンをかざしてサーバにデータが蓄積される形式に更新すれば、そのままデータの集計や分析が可能となります。
デジタル化された情報やサービスを強化し、発展させていくのには、このデータ分析が欠かせません。たとえ出発点は同じあっても、データ分析力があれば、トライアンドエラーを繰り返し、はるか高くまで品質を向上させることができます。
DXの文脈で世界中で最も注目され、業績を伸ばしている企業の一つにNetflixがあり、その先端的なデータ活用力には定評があります。ちなみに、リード・ヘイスティングスCEOは、数学とコンピュータサイエンスの学位を保有しています。
DXを成功させるためには、データ活用の観点は切っても切り離せません。数学、特に統計の知識があれば、データを活用すればどんな恩恵を受けられるか、自ら考えることができるようになります。
最初のステップを決める
情報技術によって何ができて、データ活用の力でどのような恩恵が受けられるのかを発想できれば、自社においてどの領域をデジタル化させていけば良いのか考察し、意思決定できるようになります。
一気呵成に大きな領域を攻めるべき時もあるかもしれませんが、通常は、有限な予算や人材を、効率的に成果に変えていくためのステップを踏みます。
企業のデジタル化は、主に4つに整理できます。
どこから始めていくのが良いのか見定めることが、成功するDXの最初のアクションになります。