データサイエンティストの5つの顔

 データサイエンティスト人材が逼迫している。AIが注目され、データはその燃料に位置づけられる中で、AIやデータを自在に扱える人材があらゆる分野で必要になっている。製造業でも金融業でも輸送業でも同時に必要となっている。

しかし、その実像は曖昧だ。確かなことは、単なるデータ解析の技術者ではないことである。データ解析技術だけあっても大きな価値は生み出せない。むしろ別の顔を持つ必要がある。私は、以下の5つの顔が必要だと考えている。

 (1)「結果(アウトカム)にこだわる人」 

メディアの論調では、データが大量にあればそれだけで価値が生まれるかのごとき記述を見かける。そんなことはない。データは、それだけでは価値につながらない。目的とする定量的成果(アウトカム)を決めてこそ、データは生きる。目的を決め、目的のためには、状況にあわせ柔軟に判断をできるようにする(ここにデータが活きる)のがデータサイエンティストの仕事である。

 (2)「既存ルールを壊す活動家」

しかし従来、社会をマネジメントし、リスクを管理する手段として、ルールが用いられてきた。そして、ルールに国や企業がお墨付きを与えることで、社会の秩序が成立してきた。しかし、このルールに頼る方法は、杓子定規に過ぎる。あなたの子供の命が一刻を争う状況でも、交差点で赤信号ならば車を止めなければいけない。たとえ自動車も歩行者もいなくてもである。これがルールの限界である。子供の命よりも交通ルールを大事にしているのである。もちろん交通事故のリスクから我々を守るためにこれまでは信号というルールが必要だったのである。我々の周りには、このような杓子定規なルールが沢山ある。今データとAIがあればルールに頼らずリスクをマネージできる可能性がある。しかし、これを進めようとすると、既存のルールと常に対立することになる。従ってデータサイエンティストが結果を出すには、杓子定規なルールから社会を解放する活動家にならなければいけない。

 (3)「隠れた意味を語れる人」

データは、硬直的なルールから我々を解放し、状況にあわせた柔軟な行動を可能にする。しかし、これは従来のルールを単純に守るのに比べると、説明はより難しい。これを言葉であらわせることが必要になる。専門的な言葉では伝わらない。データの背後にある考え方を普通の人にも伝わる表現で伝えなければならない。

 (4)「物事をシンプルにできる人」

データを使うことで、複雑な世界を統一的に単純に記述することができ、複雑な物事を統一的に表現できるようになる。ディープラーニングの生みの親の一人、シュミットフーバー教授は、究極的には森羅万象の予測、判断が、10行の記述で可能になると予測している。世界をシンプルに統一的に見る道を拓くのがデータサイエンティストの役目である。

 (5)「人々を正しい目的に導く人」

データとAIを活用するというのは、あらゆる社会のメカニズムをアウトカム中心に書き換えることになる。しかし、ここで最も重要なのが何が本当のアウトカムかである。間違ったアウトカムを設定すれば、データとAIは悪のツールになりうる。データサイエンティストの役目は、正しいアウトカムを設定し、地球をよりよき場所にし、人々を幸せにすることである。

従来、我々は、ルールとマシンを活用し、生産性を高め、リスクを管理してきた。このために、多様な人間が一律なルールやマシンに無理にあわせてきた。今データとAIにより状況が変わる。多様な人間と状況にあわせ、持てる資源とデータを活用し、置かれた場所で人を花咲かせることができるようになる。この新しく多様な世界への導き手としてのデータサイエンティストの姿を今後も具体化し、人材を増やす必要がある。

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