発想が広がらない時に役立つ、アイデアの「綿毛構造」
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発想が広がらない時に役立つ、アイデアの「綿毛構造」

こんにちは。博報堂でブランド戦略コンサルタントをしている岡田です。

新しいアイデアが思いつかない・・そんなことありますよね。私も入社したばかりの日々は、常にその悩みを抱えていました。

その後、数々の現場を経験したことで、発想のコツが多少は身についたような気がします。また、学生や若手社会人を対象に、アイデア発想法についてお話しする機会も増えてきました。

そのような場では、参加者の多くは「埋めればアイデアが生まれるフレームワーク」のようなものを期待します。もちろん、発想のフレームワークはたくさんあるし、知っているとアイデアの数は広がります。

しかし、フレームワークの前に、そもそも「アイデアの構造」を知らないと、たくさん出たアイデアの中でもどれが良いのか、が見えてこないことがあります。

長い目で見れば、まず「アイデアの構造」を知り、その上でフレームを学ぶ方が効率的です。

例えば、テニスやゴルフなどのスポーツも、最初から道具にこだわるよりも、まずはプロに基礎を学んだ方がよいと言われます。

同様に、アイデア発想についても、基礎を学ぶことは大事なのですが、意外とアイデアの基礎的な構造を教わる機会は少ない気がします。

そこで今日は、「綿毛(わたげ)構造」と私が勝手に名付けている、アイデアの基礎的な構造について書きたいと思います。

具体策だけではアイデアではない


先日、大学の授業で学生たちに、こんなテーマで話し合ってもらいました。

あるチョコレートブランドがあります。スーパーやコンビニで売っている、家庭のおやつに人気のブランドですが、売上は横ばいが続いています。売上を伸ばすためのアイデアとは?

すると、次のようなアイデアが出てきました

学生:都心の一等地に、チョコレートを自分でアレンジできる店舗を作るのがいいと思います

さて、このアイデアを、どのように評価したら良いでしょうか?

このアイデアだけ聞いも、なかなか判断がつかないのではないかと思います。

そこで私は、アイデアを考えた学生に、さらに質問をしてみました。

学生:都心の一等地に、チョコレートを自分でアレンジできる店舗を作るのがいいと思います。

私:面白いアイデアですね。ちなみに、なぜ自分でアレンジできる店舗を作ると良いと思ったのですか?

学生:いまスマホで検索したら、このお菓子を使ったアレンジレシピの画像が結構あったんですよね。私は、このチョコは単品で食べるものだと思っていたので、アレンジできるなんて知りませんでした。だから、それが体験できる店舗があったらいいかなと思ったんです。

私:なるほど。つまり、ただ店舗を作りたいというのではなく、「アレンジできるお菓子である」というイメージを付加することで、さらに売上を伸ばそうということなんですね。

話を聞いていくと、この学生さんは、このチョコレートブランドをアレンジして楽しむ人がいることに着目していたことがわかりました。

そして、このアイデアは

アイデアの目的:
「アレンジできるお菓子」というイメージを付加する

目的達成のための具体案:
アレンジできる店舗を作って体験してもらう

という2層の構造になっていることがわかりました。

この構造を、たんぽぽの綿毛風に示すと、こんな感じです。

タネの部分が、アイデアの一番大事な目的にあたります。綿毛のところが、アイデアの目的を達成するための具体策になります。

アイデアは、つい「具体策」の方に目がいきがちです。しかし、それだけで評価するのは難しい。具体策を通じて実現したい「目的」とセットになって語られる方が、とても伝わりやすいのです。

この、「伝わりやすいという」視点は、アイデアを扱う際に結構大事です。というのも、アイデアを実現させるためには、他の誰かを巻き込む必要があるからです。相手に「なるほど!」と思ってもらえるよう、アイデアをわかりやすく語らなければいけません。

ですので、アイデアを伝わりやすい構造にしておくことは、企画を仕事にしているプロは、みな大事にしています。

伝わりやすいアイデアの構造を、今回、私は、遠くに飛ばすための綿毛(=具体策)と、のちに芽を出すタネ(=目的)の関係が似ているなと思い、「アイデアの綿毛構造」と呼んでみました。

アイデアは「目的」と「具体策」の2層構造になっていることや、相手に伝えるときにはセットだと伝わりやすいことを知っておくと、アイデア発想がやりやすくなると思います。

タネを生かして綿毛を増やす


また、綿毛が何本あっても構わないのと同じように、アイデアも、目的さえブレなければ、具体策をたくさん広げることは大歓迎です。

例えば、「アレンジできるお菓子」にするという目的は良いのですが、その具体策として店舗を作るのはコストも高く、参加できる人数も限られてしまうという難点があります。

その場合、目的はそのままに、SNSでアレンジレシピを投稿してもらうキャンペーンを行う方が、コストも低く、参加者も増えるかもしれません。

あるいは、既に全国にチェーン店を持つコーヒーショップなどとコラボして、複数の店舗で体験できる仕掛けにした方が、多くの人の目にとまるかもしれません。

目的をそのままに具体策を広げることで、綿毛構造がリッチになっていきます。このように、綿毛構造がしっかりしていることで、「だったらこれもあるよね!」と、具体策を付け加えやすくなります。

さらに、綿毛はたくさんあっても構わないけれど、タネは一つしかないという点も、アイデアと似ているなと感じています。

1つのアイデアに、目的は1つ。目的が2個も3個も入ってくるアイデアは、良いアイデアとはいえません。もちろん副次的な成果が生まれることはありますが、企画の段階では目的が1つに絞り込まれている方が良いアイデアだと言えます。

具体策を考えていると、つい本来の目的を見失ってしまうこともあります。そんな時もこの綿毛構造に立ち戻れば、目的を再確認することができます。

自分のアイデアをより良いものにしたい時、この綿毛構造は使えるのではないかなと思います。

アイデアを自分ごと化する


綿毛構造が役に立つのは、自分がアイデアを生み出す時だけではありません。

部下や後輩の発言に対して、綿毛構造をもとに質問することで、相手のアイデアをより良くすることも可能です。

例えば、アイデアブレストをしている時、後輩が思いつきのようなアイデアを言ったとします。経験値の高いあなたは、つい「それはうまくいかないでしょ」「昔似たようなのがあってさぁ」と言いたくなるかもしれません。

そう言いたくなるのをグッと我慢して、「後輩のアイデアは、綿毛構造でいうと綿毛のところだな。肝心のタネはなんだ?」という風に考え、質問してみることができます。この記事の冒頭に紹介したチョコレートの事例のように、「なんでそう考えたの?」というふうに聞いていくのです。

すると、思いつきのアイデアのもととなるタネが、意外とハッとすることだったりもします。そんな時は、タネをうまくいかして、「だったら、こういう方法もあるよね」と、具体策を一緒に考えてあげれば良いのです。

そうすると、最初に後輩が発言した具体策とは違うものになったとしても、その後輩は「自分の発言がもとになって、新しいアイデアが生まれた!」と感じるはずです。そうやって生まれたアイデアは自分ごと化するので、後輩が自主的に進めてくれる可能性が高いです。

このように、相手の発言を綿毛構造で分析して、足りないところを追加で質問することによって、共同でアイデアを生み出す、コーチングのような使い方もできるのです。

今日は、アイデアの基礎的な構造について書いてみました。アイデアの綿毛をたくさん生み出して、周りに届けて、花を咲かせるチャンスを増やしていきましょう。

※Twitterでは毎日気になる記事をコメント付きで投稿しています。先日紹介したこちらの記事もとても参考になるので、合わせてご覧ください。


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岡田庄生 | 博報堂ブランド・イノベーションデザイン

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岡田庄生 | 博報堂ブランド・イノベーションデザイン
博報堂ブランド・イノベーションデザイン局 部長 / 博士(経営学) / 共創型のブランディング・イノベーション創出が専門 / 日経COMEMO KOL / 著書「アイデア練習帳」(日経文庫)ほか / 法政大学・青山学院大学・武蔵野大学 非常勤講師 / 趣味はキャンプとコーヒー☕️