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スニーカー転売市場にみる若者文化と投資の融合トレンド

 富裕層が高級時計を購入するのは、趣味としてコレクションを楽しめることに加えて、資産としての価値も高く、イザという時には換金しやすいためである。 商品単価に違いはあっても、海外ではスニーカーが代替資産として扱われるようになっている。

その価値形成を牽引しているのは、10~20代のZ世代であり、彼らは平均8足のスニーカーを所有して、新しい靴を毎月購入する層も3割近くいる。Z世代にとって、スニーカーは文化やファッションの象徴であり、有名アスリートやアーティストが着用しているスニーカーがSNSに投稿されると、相場が上昇する特性がある。

スニーカー転売は100ドル前後の資金から行うことができるため、株式投資や不動産投資をするほどの資金がない若者でも、手軽に実行できる副業として世界的な人気が高まってきている。希少性の高いスニーカーを収集、転売する者は「スニーカーヘッド(sneakerhead)」と呼ばれ、若者のストリート文化と投資とが融合してきている。Z世代は投資にも関心があることは、各種の統計からも示されているが、スニーカーは、その対象として最も手掛けやすいアイテムとなっている。

【スニーカー転売仕掛け人の存在】

こうしたスニーカー市場の好調を裏側から牽引しているのが、転売マーケットの存在だ。2015年の創業で、米国デトロイトを拠点に運営される「StockX」は、世界最大規模に成長しているスニーカーの再販マーケットプレイスで、現在は200ヵ国以上のスニーカー愛好者から利用されて、年間10億ドル超の売買を仲介している。サイト上では、ブランドバッグ、アパレル、高級時計なども扱っているが、取引される商材の75%はスニーカーである。

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StockXがスニーカー売買を仲介する仕組みは、ebayやヤフオクのように、それぞれ品質が異なる中古品を扱うのではなく、箱付き新品の再販に限定した仲介をしているのが特徴である。そのため、出品者が商品の写真をアップロードしたり、説明文を掲載したりする必要がない。

出品者は、StockXのサイト上に登録されている約11万品目の商品データベースから、販売する商品のモデル名、カラー、サイズなどの項目を選択して「SELL(販売)」ボタンをクリックするだけで出品登録ができる。

販売の方法には、「Ask(希望額で売る)」と「SellNow(今すぐ売る)」の2種類があり、前者の場合には、現在の取引相場をみながら、自分が売却したい価格を入力する。サイト上では、同じモデルのスニーカーを出品する売り手が複数いるため、低い希望額を設定している商品ほど早く売れていくことになる。これは株式売買の「指し値」に近い。一方、「今すぐ売る」の場合には、現在の取引価格で迅速に売却することができ、株式の「成行売り」に近い売り方である。

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売り手と買い手の取引が成立すると、売り手は商品を2日以内にStockXの認証センターに送付する。センターでは、商品が本物であること、サイズラベルが貼られた箱付き、靴紐などの備品も揃った新品であることの検品をした後、買い手に発送する仕組みになっている。StockXは、米国内の他に、カナダ、香港など世界に認証センターを作り、2000人以上のスタッフを採用することで、グローバルなスニーカーの転売ネットワークを築いている。

2020年6月には、StockXが日本法人「StockX Japan」を立ち上げていることから、日本でもスニーカー投資が盛り上がっていく可能性がある。ちなみに「StockX(ストックX)」の社名には、物販に株式投資の手法を取り入れる意味が込められている。

このトレンドに対しては、若者向けのマーケティングを展開したいブランド企業も意識し始めている。わかりやすいのは、スニーカーメーカーとブランド企業とがコラボして限定スニーカーを発売することだ。売り出したスニーカーの人気が高まっていけば、ブランドの知名度と価値を高めることができる。Nikeは、アパレルメーカーの他にも、HIPHOPアーティスト、スラムダンクなどの漫画キャラクター、化粧品メーカーなど、若者に影響力のあるブランドとのコラボにより、数量限定のスニーカーを次々と売り出している。

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