いわゆるESG投資が拡大してきていることについては、皆さんご承知の通りですし、ミレニアル世代がESG投資の効果を高く評価しているという推計もあるので、これからさらに加速していく期待は高いと思っています。ファイナンスの流れで社会を徐々に変えていくということはあるべき姿である一方、残念ながらいまのESG投資は投資判断に資するような評価手法が確立できてない中で、議論が若干ブームというか過熱気味であることは事実だろうと思います。日本の議論の多くも「あそこでもこれをやっている」「こちらでもやっている」というものです(まぁいつも通り)。まとめると、方向性は評価し、期待していますが、現状の課題の大きさも認識すべきであり、手法として成熟させていかないとブームで終わってしまうのではないかと懸念します。

現状私が感じている課題としてはいくつかありますが、まず、個別イシューに偏り過ぎていること。ESG投資と紐づいて理解すべき、国連のSDGsは貧困撲滅や人権の問題など持続可能な発展に向けた17の目標で成り立っています。企業の長期的な成長に必要な「ESG投資」も環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの柱で幅広い課題に挑戦することが必要だと思うのですが、環境は気候変動問題のみ、Socialは女性活躍に偏っているように見えます。多様な課題に取り組み、「取り残される人をつくらない」がコンセプトのSDGsの精神をもう一度考えるべきではないかと思います。

さらに言えば、代替技術が十分ではない状態で、既存技術の否定が先走ると、結局弱者にしわ寄せがいったり、必要とされる長期的な技術開発に資金が回らないという事態も起こるでしょう。具体的に言えば、石炭発電所を多く持つ電力会社をダイベストメントの対象にするということが多く起きていますが、では、現実のエネルギー供給をどうするのか?

基本的に電気は「同時同量」です。今使う電気は、いま発電所で作ると言うのが基本です。足りない時はどこかから送電線でもってきて補い、余るときにはどこかに送りださないといけません。足りなくても余ってもバランスを崩すものなのです。そのため、送配電網をさらに広域で強化する、あるいは、蓄電技術がやたら進歩する(安価になる)と言ったことが無い限り、太陽光や風力の調整役は、人が火加減を調整できる火力発電が担います。単純な投資引上げでは、例えば調整役の火力発電を石炭から天然ガスに転換する、あるいは、老朽化した効率の悪い石炭から最新の石炭に転換すると言ったことも否定されてしまいますし、新技術への研究開発投資などに資金が回りづらくなる可能性もあるでしょう。代替手段を伸ばしていくファイナンスの方が、ダイベストメントうんぬんより健全だと思っています。

「この正義を守るため、いうこと聞かないと金出さないぞ」と言うほうは、気持ちがいいと思います。ただ、そうして振りかざす正義が本当に正義か?ここには非常に慎重であるべきだと思っており、今の議論にはそれが欠けているようにも思うので、心配しています。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34966680U8A900C1MM8000

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