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全社員向けDX教育 必要なのは大きなビジョン

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

去年あたりから急速に普及しつつある言葉に「リスキリング」があります。働き方改革からの流れがあり、コロナ禍という後押しもあって既存業務のデジタル化とその先のDXが脚光をあびています。そして、需要が急速に高まったことにより専門人材が枯渇しており、採用もままなりません。

外部人材の力も借りるが、そもそも既存業務をよくわかっている現社員にスキルをつけるのが一番早いのでは?ということもあり、リスキリングが盛り上がってきているのでしょう。

今日も日経朝刊に以下の記事が出ていました。世界的に見ても出遅れていると言われている、不動産DXに関係するものです。

三菱地所がグループ全社員1万人を対象に新たなデジタル教育に乗り出す。データ分析の手法などを学ぶ約15時間の講座受講を必修とし、優秀な人材を選抜してマーケティングに生かせるデジタル技術を教える。経験に頼らず、データを生かした顧客への提案で効率的な営業に転換する。外資との競争が激しくなる中、デジタルトランスフォーメーション(DX)が遅れる不動産業界でも人材育成が本格化する。

三菱地所がグループ全社員に専門人材の育成プログラムを設けるのは初めて。グループ全社員にデータ分析の手法を長時間かけて学ばせるのは産業界でも珍しい。

日経電子版

不動産業界は法規制もあり、対面での説明や紙の必要書類が多いです。最近になってようやく、宅地建物取引主任者が対面で実施しなければならなかった重要事項説明書について、リモートでの実施ができるようになりました(IT重説)。それ以外にも、データが共有されていなかったり、仲介に情報が集まりやすく売り主や買い主との情報の非対称性が課題と言われてきました。

また、コロナ禍でオフィス需要に陰りが見え、今後も完全に元通りになる見込みも定かではありません。都心では大型ビルの再開発が盛んに行われていますが、単純に良い場所にスペースがあるだけでは戻るほどの魅力を感じなくなってきている状況ですので、街そのものに総合的な付加価値をどうつけるかが勝負になってきています。

オフィスだけでなく、住宅にも変化の波が訪れています。Z世代と言われる若者の中には、定住や持ち家にこだわらない方々も多くなってきているそうです。

定住や持ち家にこだわらない若者を狙った住宅サービスが相次いでいる。セレンディクス(兵庫県西宮市)は2022年にも、3Dプリンターで建てた格安物件の販売を開始。ユニット(東京・千代田)は帰宅日数に応じて家賃を減らす賃貸住宅を増設する。1990年代後半以降に生まれたZ世代を中心とした新しい住宅観に、スタートアップが応えている。

日経電子版

このような変化の中で社員の価値観やスキルのアップデートが必須なことは自明ではありますが、単にスキルだけつけてもそれが全社の戦略と連携していなければ本末転倒です。そのためには経営者が率先して全社のビジョンをアップデートし、広く繰り返し社員に語りかけてその意義を啓蒙することが大事です。

「デジタル人材の育成を『分かる』『使える』『つくる』の3階層に分けて実施します。まずベースとなる分かるについては年4万人を対象にITリテラシーの維持・向上にむけて、eラーニングなどを活用して始めたところです。真ん中の階層の使えるは5年で約5千人を対象としたリスキリング、デジタルツールを使える人材を育てます。最上層のつくるはICT職を対象にしたプロフェッショナル教育です。今後対象を都職員から区市村職員へと拡大し、デジタルを通じて都の住民サービス向上につなげます」。

NIKKEI STYLEキャリア リスキリング戦略

全国の自治体の中でも先進的かつ大規模にDXに取り組んでいるのが、巨大行政である東京都です。注目すべきは3階層のピラミッド型に人材を区分けして、人数の多い順に「わかる」「使える」「つくる」と定義しているところです。高度なスキルが必要な「つくる」人材については少数精鋭。ただ、全員に「わかって」もらう必要がある。なぜならば、現場にこそ対処すべき課題・機会があるからということでしょう。

例えば、メールやコピーやFAXを知らない社員が現場に大勢いたとしたらどうでしょうか。おそらくいまやっている業務の大半は回らなくなるのではないでしょうか。DXも同じことで、データの集め方や分析や共有の仕方については全員が理解していないと抜本的な改善には繋がりにくいと思います。

戦略に基づいた将来あるべき姿=ビジョンと、それを行動に移すために全員の基本的なスキルのアップデートが必要だということでしょう。


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タイトル画像提供:kabu / PIXTA(ピクスタ)

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