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バラマキ施策はキャッシュレス化を推進できるか?

キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識

2016年時点での、日本の家庭支出に占めるキャッシュレス決済比率は19.8%と2割程度。韓国では、現金はほぼ使われておらず、キャッシュレス決済は96.4%。中国では約60%まで伸びており、キャッシュレスに関して日本は大きく後れを取っています。

日本でキャッシュレス化が進展しない理由には、偽札の流通が少なく現金が信用されていたり、これまでクレジットカードの加盟店手数料が高くてカード決済の普及が限定的であったなど様々な指摘があります。

しかし、現金決済は人手が掛かかったり、訪日観光客の利便性を損なうなどの問題があるため、現在、国を挙げたキャッシュレス推進が進められれています。

そんな中で、最近はスマホ決済サービスを提供する企業が増えてきており、ソフトバンクとヤフーの「PayPay」、LINEの「LINEペイ」、そしてNTTドコモの「d払い」と、大規模なバラマキ型の還元キャンペーンが続いています。

特に、PayPayの100億円キャンペーンは社会的な話題になり、キャッシュレス化を大きく推進しています。

PayPay「100億円あげちゃうキャンペーン」、効果はどれくらいあった?

MMD総研が発表した「2019年2月 QRコード決済サービスの利用に関する調査」によると、QR決済のシェアは、楽天ペイ(9.4%)、PayPay(8.1%)、LINE Pay(7.9%)となっており、PayPayは、最も遅い2018年10月に参入したにも関わらず、シェア2位を獲得するほどに急成長しており、100億円還元キャンペーンは一定の効果があったと言えます。

これまでオフラインでキャッシュレス決済を利用する必然性のなかったユーザも、大きな還元率に魅了されて、アプリ導入の手間を掛けて、利用を開始したことが想定されます。

しかし、アプリダウンロードなどの決済利用環境を整備するリテラシーがありつつ、お得を求めて手間を掛けて活動する人たちは、日本全体の中では少数派と考えるのが自然で、こういったばらまきを続けても、新規の利用者を大幅に増やすのは難しくなることを予想しています。

ただし、スマホ決済サービス間の競争が激しくなる中で、利用者の奪い合いの観点でのキャンペーンは止まらず、このままではパイが広がらない中での値引き合戦が続いてしまい、キャッシュレス化の流れが減速してしまうことを危惧しています。

今後、スマホ決済、キャッシュレス決済の利用をさらに促すためには、お得以外の価値を実現する必要があると考えています。

例えば、交通系のキャッシュレス決済サービスであるSuicaでは、利用データから我々が使っている交通網を把握することができるので、より良い経路があればリコメンドをするなどの付加価値を提供することが可能です。

中国の都市部ではライドシェアのDiDiが、生活をより便利に革新しました。ライドシェアを利用するためにはスマホ決済が必須です。ライドシェアとスマホ決済が統合的にキャンペーンを行うことで、これまでにライドシェアもスマホ決済も体験したことのない層を取り込みました。

これからはお得感だけではなく、生活がより便利になっていくことでキャッシュレス決済に巻き込める層を着実に取り込んでいくことを目指すべきです。

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