バックマージンに依存した保険業界の体質とFintechの参入余地
セールスで起業したい人にとって、これまでの保険業界は成功できるチャンスがある分野だった。優秀な成績を上げた営業マンや代理店に対して、豪華なホテルでの表彰パーティや、海外旅行などの賞品を与えているのは、今では保険業界くらいしか残っていない。
この資金源はどこから出ているのかといえば、それは紛れもなく、契約者が毎月払っている掛け金(保険料)である。日本では、ほぼ 100%の世帯が何らかの民間保険に加入しており、生命保険に限定しても、加入率は89.2%となっている。 1世帯あたりが払い込んでいる保険料の平均は年間で38.5万円と、家計収入が伸び悩んでいる中での負担はかなり大きい。
しかし、保険料のすべてが、病気や死亡の際に給付される保険金に使われているわけではなく、その中からは、保険会社が経営をしていくための経費や広告費、営業マンに対する歩合報酬などが含まれている。これを「付加保険料」という。 付加保険料の割合は具体的には公表されていないが、大手生命保険会社の場合で、およそ6~7割とみられている。つまり、保険金給付の部分は3~4割しかないのが実態だ。この件については、ネット系生命保険会社「ライフネット生命」のホームページでも解説されている。
■やっぱり気になる「保険料の中身」(ライフネット生命)
それでも、一般の生保加入者が、営業マンや代理店に相談している割合は高く、契約全体の7割以上を占めている。その理由は、保険商品の仕組みが複雑で、素人ではベストな選択を決めることが難しいためだろう。
こうした状況を打開する目的から、金融庁では保険の分野にもFintechスタートアップ企業の新規参入を促す規制緩和を進めている。日本の金融商品として、これから手数料マージンを省いた直販ビジネスが活発になるのは、投資信託と保険の分野である。
金融庁は業種ごとに分かれている金融仲介業の登録制度を一本化する。ウェブを使って商品を販売する企業を対象に、一度の登録だけで預金や保険、投資信託などを扱えるようにする。銀行などは業種ごとに登録をして複数の金融商品を販売しているが、スタートアップ企業には複数の登録制度が参入障壁になっている。規制を緩めて金融への新規参入を促す。
また、日本の生命保険加入者は、米国と比べてかなり高く、条件によっては、5割以上高い掛け金を払い続けている。米国の保険料が安いのは、保険会社が資金を運用する利回りが、日本よりも高いこともあるが、加入者の健康状態によって細分化された保険プランを設定していることも大きい。
米国では、喫煙者と非喫煙者では保険料の設定が異なるし、血圧、コレステロール、体重などの数値、本人の既往歴に加えて、親族で亡くなっている人の死因、交通違反の有無までが、保険加入の審査項目として挙げられており、健康上のリスクが少ない人ほど、安い保険料が提示される。
反対に、糖尿病や心臓病などの持病を抱えていている場合、日本では生命保険への加入が難しくても、医師の診断、治療を受けて正常な数値を維持していれば、米国では加入できるケースが少なくない。
生命保険の仕組みは、加入者全体の中で、病気にかかったり、死亡する人の確率を予測して、加入者が相互に分担する保険料率が決められている。その確率予測が正確になるほど、合理的な保険料を設定できるが、近年では、ITによるビッグデータ分析ができるようになったことで、昔よりも多様で高度な保険サービスを開発できるようになっている。
※タイトル画像出典:https://flic.kr/p/s5Zd2C
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