見出し画像

ユニコーンという幻想を超えて

米中の貿易戦争が引き金となって経済の見通しが危うい中で、Uberなどの上場が危ういのではないか、という見方が出てきている。

記事にある通り、経済減速もあるが、巨大な資金を集め、ユニコーンなどともてはやされたものの、株式市場がそれだけの企業価値を認めてくれるか、というところがポイントだろう。

ちょうど、日本のスタートアップの資金調達状況についての調査結果もニュースリリースが出て、資金調達総額は3,800億円以上と、記録を更新したという。一方で調達社数は減少したということで、これは1社あたりの調達額が調達総額の伸び以上に増えている、ということでもある。

日米の資金規模は依然として開きがあるものの、VC等が組成するファンドの額が増えたということは両国とも同じで、それに連れて1社あたりの投資額も増えているということだろう。ファンドに集まる金額が増えたからといって急にVCの数や人数が増えるわけでもない以上、投資検討ができるスタートアップの数が増えるわけではないので、必然的に1社あたりの投資額は大きくなる。そうなれば、企業価値が釣りあがって、比較的少額の投資では株式の持分比率が相対的に低下するので、一定以上の資金を投じざるを得ない、という状況がループして、資金調達がバブル的な状況になってきたが、ここにきて曲がり角を迎えそうだ、ということなのだろう。

そうしたからくりの中で「ユニコーン企業」が生まれ、それがもてはやされてきた状況は、まさにバブルそのものだと感じる。

赤字企業が市場を独占するために巨額の借り入れをすることは、一部の起業家や投資家を利するかもしれないが、資本市場や労働市場をゆがめ、競争原理をもゆがめることになる。
投資家が、"成長"で価値を測るやり方を志向する限り、この狂騒曲は終わらない。

この指摘はその通りだと思うのだが、”成長”に代わる価値の尺度が見いだせていないし、現在の通貨システムとそれを基盤とする株式市場を代替するものがまだない中では、まだしばらくは、こうしたバブルとその崩壊という循環を繰り返していくのだろうとは思う。

オルナタティブな通貨や経済システムが、そのうち出てくるようにも思うけれど、それが出てくるとしても数十年とか、あるいは100年の単位の時間が必要なのだろうという気がする。

しばらくは「冬の時代」を過ごすことになるのかもしれないし、その冬は、2020年を過ぎた日本にとっては、長引くことになるのかもしれない。そのあたりを踏まえてスタートアップの企業経営をしていかなければならない時期に差し掛かったと思う。

一方で、スタートアップの堅実なビジネスの積み上げと、大企業を中心とする既存企業が資金だけでなくビジネス自体の提携などによってスタートアップと関わることで、新しいビジネスが生き残っていく道が見えるなら、ここしばらくのシリコンバレー型のエグジットとは異なるシナリオにスポットライトが当たるのかもしれない。

いつまでも去年のような成功シナリオに固執しないことは当然として、「冬」には冬なりの過ごし方があり楽しみ方がある、という気分でスタートアップのエグジットを考えていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?