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ワクチン接種率に規定される2021年の世界経済見通し

日本政府も、遅ればせながら新型コロナワクチンの高齢者への接種を開始しています。そして、菅首相は7月末までに高齢者へのワクチン接種完了を目指すべく、ワクチン接種一日100万回を目標にする考えを明らかにしています。しかし、人口規模が日本の2.6倍以上ある米国の1日当たり接種回数は400万回を超えているようであり、海外に比べて接種率の進捗が圧倒的に遅れていることからすれば、政府は更に接種率を早めることも検討すべきでしょう。

実際に、主要先進国の経済成長率見通しとワクチン接種率の連動性の高まりは、定量的にも示されます。というのも、IMFの2021年経済成長率見通しを被説明変数、直近の人口100人当たりワクチン接種回数を説明変数として単回帰分析を実施すると、統計的に有意な正の相関関係があり、ワクチン接種率と経済成長率見通しに関係があることが指摘できます。つまり、ワクチン接種率が世界経済の格差を広げることが示唆されます。

そして、ワクチンの接種率と主要先進国の経済成長の見通しには、はっきりと相関関係が見て取れることからすれば、ワクチン接種が進めば国民の活動が再開し、サービス消費の回復が本格化することになるでしょう。なお、この関係から試算すると、日本で英米並みに接種が進んでいたとすれば、2021年のGDP予測が現状の見通しより+2.2%ポイント程度、額にして約11兆円程度増えると推計できます。

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ただ、政府は7月末までに高齢者へのワクチン接種完了を目指していますが、英調査会社「エアフィニティー」が昨年12月に公表した集団免疫獲得時期の見通しによれば、日本は医療従事者・高齢者の接種完了時期が今年10月、集団免疫獲得時期に至っては欧米諸国に大きく遅れて来年4月となっています。この見通しに基づけば、集団免疫獲得に近づくまで日本はまだかなりの時間を要することになってしまいます。そうなれば、今後もしばらくは緊急事態宣言の発出と解除を繰り返すことになり、引き続き経済に甚大な影響が出ることは避けられないことになるでしょう。

このため、傷口をできるだけ広げないためにも、政府は海外を見習い、国産ワクチン実用化も含めて、国内でのワクチン接種率をさらに加速させるべく柔軟で迅速な対応が求められるといえるでしょう。

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