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メタバースにおける「学びの場」のあり方

「メタバース」という言葉がバズワードと化して、そこかしこで聞かれるようになりました。Facebookが「meta」に改名したことや、Pokemon GOで知られるナイアンティックが強烈に批判したことなどで、昨年からずっと話題です。最先端のテクノロジーに関する議論として、ぼくの関心とは遠いところにあるのだろうと思っていたところですが、意外にも、メタバースというキーワードと共に仕事をすることが増えてきました。

メタバースって、何ができるの?

調べながら知ったことですが、メタバースの特徴のひとつが「インターネットを三次元空間化すること」であるといいます。ちょっとイメージを掴むのが難しいかもしれません。僕も最初はピンときませんでした。

たとえば、あなたの友人とのLINEグループが「三次元空間」になっていたとしたら、そこはどんな場所でしょうか?

共通の趣味をもっているグループだとしたら、どうでしょう?漫画に囲まれた空間かもしれませんし、ゲーム的な世界かもしれません。あるいは、有象無象の話題が飛び交うグループだったらどうでしょう?色とりどりの光線が飛び交う宇宙的空間かもしれません。

こんなふうにインターネット上のあらゆる集まりの場が「三次元空間」になってしまう世界が、すぐそこまで歩み寄ってきています。

VRならではの三次元空間の可能性

このような三次元空間化は、メタバースのなかでもとりわけ「VR」の技術が得意とするところでしょう。VRの技術を活用することで、さまざまな空間が描き出せるようになります。その特徴をいかに書き出してみました。

VRの空間設計の技術を学び、研鑽することで、さまざまな空間をつくりだすことができるようになります。「実在するが簡単にいじれないもの」としてたとえば、「ピラミッドの中」にも入ることができます。あるいは「縮尺が自在に変わる」という特徴を用いれば、たとえば人体のなかに入ることもできます。

VRで変わる「学びの場」のあり方

ぼくは、アートエデュケーター/ファシリテーターとして、企業組織を中心に、大人から子どもまで多様な人々の学びの場を作り出しています。こうした「学びの場」のありようにも、VRの技術が介入し、新しいシーンを切り開くことが想像されます。

まず「教室」や「教材」の在り方がかわっていくでしょう。現在は、VR技術やAIアバターの技術を用いて、本物そっくりのアバター、本物そっくりの教室を再現する研究なども行われています。遠隔の地にいながら、本物の学校に通っているかのような感覚を生み出せるのがこの方向性の探究の特徴でしょう。

他方で、先ほど挙げた例のように、実在するが簡単に触れられない空間や、縮尺を変えなければ入れない空間などに入り込んで、学ぶことも可能になります。

たとえば人間の「腸内」を「教室」として、「腸内細菌」について学ぶ授業なども可能になります。細菌が食物を分解する仕組みなどを、目の前で見ながら学ぶことができるようになるのです。

また、「今はまだ実在しないSF的世界」を「教室」として立ち上げることもできるようになります。たとえば、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算がありますが、その世界をVR上で再現し、プラスチックごみに囲まれた海のなかで環境問題の対策について検討する授業も可能になるでしょう。

VRクリエイターが学習領域で活躍する機会の必要性

VR/メタバースが拡張する学びの可能性は、いまだ発展途上にあると言えます。こうした学びの可能性を広げていくためには、VRの「ワールド」を構築する技術をもった人たちの存在が不可欠です。すでにBlenderとUnityという主要ツールは普及をはじめていますが、これまで2次元のクリエイティビティの民主化を牽引してきたAdobeもまた、メタバース市場に参入しようとしています。

Adobe substance 3Dは、3Dの空間やプロダクトを制作できるツールです。こうしたツールが普及することで、3Dの技術が普及し、それらがVR空間上にアップロードされてインターネットとつながることで、多くの人々がアクセスすることが可能になります。

しかし、こうした教育の可能性が一般の日の目をみるのはもう少し先のことだとぼく自身は感じています。教育事業の場で、VRを活用した学びの場を実験する機会が、社会的にまだまだ不足していると感じます。

実験であることを前提に、VRクリエイターを巻き込みながらさまざまな教育事業がプロトタイプされること、多様なステークホルダーがそれを支援できることが望ましいでしょう。


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