組織における笑いの研究レビュー(嘘)

(このテキストは全部嘘です)

こんにちは。臼井隆志です。組織論において組織の笑いの重要性を描いた先行研究を今日は紹介します。

笠村(1984)では、職場における「揶揄(からか)い」には2種類あるとしています。

ひとつは、職場の笑いは上司が部下を揶揄うような人に優劣をつけるような笑い。もうひとつは、職場独自に使われる用語や状況を挙げて揶揄う笑いです。

前者を「いじりのからかい」、後者を「文化のからかい」とし、前者の笑いには抑圧があり、後者の笑いには癒しがあるとしています。

「揶揄う」という言葉の「揄」という言葉には「膿を抜く」という意味があるそうです。いじる人の膿は抜けるが、いじられた人は膿が溜まるのが「いじりのからかい」。逆に関わる人の膿を抜く作用をもたらすのが「文化のからかい」です。

笠村の論文以降、職場の笑い研究はしばらく進展をみせていませんでしたが、西藤(2015)では笠村の理論を引き継いだ質的・量的な調査を行いました。調査と分析の結果、「いじりのからかい」にはハラスメントの芽があることを、「文化のからかい」におけるケアの意味を見出しています。

特定の誰かひとを揶揄うのではなく、組織に流通している用語や状況を揶揄うことで生まれる笑いには、メンバー一人ひとりのガス抜き効果をもたらすと指摘しています。

笠村、西藤の研究を引き継いだ「組織と笑い」の研究者が、小峰(2024)です。組織笑学会で発表された内容では、組織文化に関する大喜利を番組を毎月実施したことによる、従業員のストレス状況をアクションリサーチを通じて解析しました。

大喜利をしていた時期と、していなかった時期で、従業員とくに管理職層のストレス値が大幅に下がっていることが指摘されています。小峰による「大喜利組織開発メソッド」は現在最も注目されている手法のひとつです。

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はい、というわけで今回は、「組織と笑い」に関する研究の歴史をまとめた風の、すべて嘘のテキストを書いてみました。

今月、劇作家・別役実の童話『空中ブランコ乗りのキキ』が上演されていました。私の友人の野上絹代さんが演出を務めていた作品で、是が非でも見たかったのですが、子どもの体調などでどうしても予定が合わず、泣く泣く断念をしました。再演を、ぜひお願いします。

「空中ブランコのりのキキ」 別役童話の魅力伝える演出:日本経済新聞

別役実のことをぼくは詳しく知らなかったのですが、野上さんからは『コントの教室』という本をお勧めしてもらいました。

この本が、目が覚めるように面白く、夢中になって読みました。そのなかに、コントや笑いの作力を上げるには、嘘をつく感覚を掴め、ということが言われていました。

嘘をつくのは良くないことなので普通はやりませんが、嘘は創作の重要な感覚を養う、というのです。

というわけで、今日は架空の論文の歴史を書いてみたわけです。「ファクト」にしばられず、思考の実験ができるという意味で、嘘の先行研究レビューをするの、ちょっと楽しいです。

みなさんがついた嘘もぜひ読みたいです。

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