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メディア業界の衰退は運命なのか。テンセントニュースが大規模リストラ

中国のさまざまな業界のリストラの話は何度かnoteで紹介してきました。

今月に入ってからもリストラの記事を目にしない日がないほど世間の注目を集めています。今回のnoteではテンセントニュース事業で大きなリストラが行われた件について。いつもリストラについて報じている彼らが大リストラされてるということで話題となっています。

6月28日に、「十三邀」「和陌生人说话」「我的时代和我」などの有名動画コンテンツを作っていたテンセントのスタジオ「好雨知时工作室」のスタッフに対して、事業改変のためスタジオごと撤退する旨の通知が来ました。

テンセントニュースは高品質のオリジナルコンテンツの制作で有名で、それを担当していたスタジオの一つが「好雨知时工作室」。ちなみに季節にちなんで「好雨知時」「谷雨」「春」「小満」「夏至」「毛都」の6つのスタジオを運用していて、社会派、ドキュメンタリー、エンターテインメント、金融、情報などのコンテンツ分野に特化しています。

今回の決断はコスト削減と効率化が進むなかで、予算をかけてリッチなコンテンツを作ることを縮小するという判断と考えられます。非公式ですが、テンセントニュースは今回の最適化で従業員を1000人から800人に削減、今年中に第2弾の最適化が行われる予定で人員は500人にまで削減予定、 さらに状況次第では100人にまで縮小することもあり得ると言われていて騒然としています。

これは中国の他ニュースメディアの今後にも影響を与えそう。ご存知のように2014年頃からバイトダンスの「今日头条」がアルゴリズムドリブンでニュースを配信し中国ニュース市場を席巻。また、WeChatの「公众号」により個人メディア「自媒体」が全盛となり中国のメディア環境が激変しました。

↑このあたりの詳しい話は以前のnoteをご参照ください

情報量が爆発的に増大したことで従来のメディアは衰退の一途をたどっていて、多くのメディア関係者が伝統的なメディアを離れてテンセントニュースやバイトダンスなどのコンテンツプラットフォームに転職したり、投資したりと変化しました。実際、テンセントニュースのコンテンツスタジオ体制では、主要スタジオに各分野の経験豊富なメディア関係者が転職で加入していて、アルゴリズム駆動型のプラットフォームが全盛の今でもテンセントニュースのコンテンツの優位性は業界ナンバーワンの地位ではありました。

ただ、収益を考えるとこのやり方はもはや通用しないのかもしれません。昨年のテンセントのメディア広告収入は前年比7%減、今年第1四半期は前年比30%減と大幅減少。 もちろん落ち込みの原因は中国経済の停滞で業界全体の低迷が根本原因とは思いますが、従来のようなコストをかけてリッチコンテンツを作るメディアのやり方ではアルゴリズム主導でユーザーの時間を奪い合う時代では戦えないのかもしれません。

日本も先日smart newsがスローニュースのサービスをやめることを発表しましたよね。資金調達している彼らですら撤退というのは、やはりこういった本格コンテンツを使ってのビジネスは日本でも難しいのでしょう。

このようにメディア産業がどんどん衰退していて、大手企業から解雇されたメディア関係者はどこに行くのだろうか? そして、長い間 "高給取り "であったメディアのプロたちを雇う余裕のある企業はどこなのか?は度々議論されています。

記事で実例にあげられていたのは、大手雑誌社を辞めた編集者が半月以上前から仕事を探していて何社にも問い合わせたが、どこも採用してくれなかったというケース。以前は雑誌社に長年勤め、今は工場勤務していて給料も大きく減っているとのことです。また、工場側には解雇された元メディア関係者から多くの履歴書が届いているとのこと。

補足として、今回の報道がなぜいつものリストラよりも大きく注目されたかには中国だからこその事情があります。

テンセントニュースなどのIT大手に転職した人たちは元は伝統メディア出身のメディア人たち。彼らは伝統メディア時代はほとんどみんな“いわゆる体制内の人間”でした。つまり国からの「事業編制」があって、メディアが企業化運営されるまで国の予算で仕事をしていて、大きいミスがなければ終身雇用になります。メディアの企業化再建になっても編制があれば国からの予算が出るのです。

それがここ数年での「インターネット企業が急成長してコンテンツにこだわるようになって、さらにテンセントなどの大手はとにかくお金がある」という時代になって、彼らは伝統メディアから優秀な人材を大量にハンティングしてました。その際に体制から出た人材は体制内時代より何倍、何十倍の給料をもらって報道というやりたいことをやってきました(たぶんある程度、人によるか)。

ただ、これほど経済が悪くなってクビになるなんてあまり予想していなかったでしょう。そんな彼らは年齢的にもスキル経験的にも再就職が難しい人も多く、終身雇用を捨てた選択がどんな心情なのかなとの議論も広がりました。

日本のメディア業界はどうですか?活字のニュース離れが起きてるなどの記事を見ることもあります。先行する中国の動向からメディア業界の未来を考えてみたいと思います。

(参考資料)


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