外国人労働者の育成は製造業シニア人材の新たな活躍のフィールド

外国人労働者の日本での長期キャリアを推進する

日本の人手不足を補う対策として、外国人労働者の受け入れは年々増えている。特に、派遣元として東南アジアへの期待は大きく、とりわけベトナムからの渡航者は多い。その多くは技能実習や特定技能などの制度を利用して来日するが、労働力不足を補うためにはできるだけ長く日本に滞在し、定着してもらうことも考える必要がある。
主目的が教育であることから、滞在期間と労働条件に制約のある技能実習生であっても、適切な支援を行い、日本への定着を前向きに考えてもらうことで特定技能への切り替えも選択肢として出てくる。
しかし、このような外国人労働者の働く組織の多くが中小企業だ。人手不足とはいえ、人材育成に割くことができるリソースや余裕のある企業はマイノリティだ。そこで、日経新聞の記事に紹介されているような外部団体の存在意義は大きい。公益財団法人『太平洋人材交流センター』は、ベトナム人リーダーを養成するためのプログラムを提供し、中小企業の経営支援を行っている。

海外生産現場のマネジメントのノウハウをもつシニア人材は多い

人手不足の一方で、シニア人材の雇用問題も以前から続いている重要なイシューだ。特に製造業では、「就社」と呼ばれるように職業人生のほとんどを1つの会社の中だけで閉じてきたために、一定の年齢を超えると社内でのポジションがなく、かといって転職するにも難しいシニア人材を数多く保有している。
このような製造業のシニア人材と面談していると、驚くような貴重なスキルや専門知識を有していることが多くある。そのなかでも、外国人労働者の定着に有効活用できそうな経験が、海外現地法人の生産現場におけるマネジメント経験だ。
2000年代初頭から、大企業を中心として多くの製造業が国内から海外に生産拠点を移行して、生産コストの最適化を目指してきた。はじめは東アジア中心だった動きが、そのうち東南アジアまで広がり、今や全世界規模で生産拠点を持つ企業も少なくない。
加えて、大企業の海外移転に伴って、サプライヤーである中小企業もそろって海外に生産拠点を設立する動きをみせてきた。大企業とは異なり、海外進出するにはリスクの多い中小企業であっても、無理をしてでも海外進出しなくてはならず、一時期は社会問題として扱われもした。
現在のシニア人材は、ちょうど生産拠点の海外移転が本格化した当初に現場の第一線で活躍していた世代だ。そのため、中国や台湾、韓国、タイ、インドネシアなどのアジアを中心として、日本的な価値観と高品質なものつくりを海外の文脈に落としこんで人材育成をしてきた経験を持つ。
現在の外国人労働者の問題では、現場でのマネジメントの拙さが原因となっていることも少なくない。それは当たり前のことで、そもそも多国籍状況のメンバーをまとめるマネジメントの難易度は高い。それに加えて、外国人労働者の多くが働く中小企業では、多国籍状況のメンバーをマネジメントするためのノウハウや専門知識を有していないことが多い。
そのような中小企業を支援するために、シニア人材をコーチや指導員として派遣するサービスを提供する大企業も出てきている。大企業のシニア人材のスキルと専門性を生かすことで、日本で働く機会を得た外国人労働者が定着し、長期的なキャリアを歩んでいきたいと思うような体制を整えることが、現代の人手不足問題を解決するためには必要だ。


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