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災害対策とフェイクニュース対策 〜群衆行動の視点から〜

 

皆さま、こんばんは。
エコノミストの崔真淑(さいますみ)です。
3/11をむかえると、日常への感謝の気持ちと、もしもに備えられているのか‥と自問自答します。そして、まだ日常に戻れない人も沢山いらっしゃるということを忘れてはいけないし、日々の社会活動から貢献できることを続けようと改めて感じます。

*3/11を振り返る

そんな課題意識が高まる日に、気になったコラムがありました。大震災に対して行うべき施策とは‥。自身は、フェイクニュース対策は必要な施策の1つと考えています。
https://note.mu/eijisakamoto/n/n34dce2c46baf

というのも、東日本大震災が起きた時に、携帯電話に大量のチェーンメールと、本当か疑わしいニュースが沢山シェアされてきました。しかも、それらは善意に基づいているようで、知的で非常に信頼している当時の同僚からもきました。一方で、こういう時はデマが多いからシェアするなとメールをくれる友人もいたり‥後に、あのチェーンメールの内容やシェアされたニュースは、パニックを引き起こすだけの代物が多かったなと痛感しました。

*フェイクニュースの怖さ

当時は、フェイクニュースなんて言葉はありませんでしたが、上述のチェーンメールも同様の物でしょう。フェイクニュースの恐ろしさについては、先日のNHK「クローズアップ現代」がそれを物語っていました。フェイクニュースが原因で、台湾の外交官の命が亡くなったというのです。本当に心が苦しくなりました。その原因が、昨夏の沢山の被害を生んだ台風という‥。関西空港が閉鎖された時にフェイクニュースが拡散されて、外交官側の言い分も伝えられない状況で追い詰められたとのことです‥。

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4256/index.html

*なぜ嘘か真実かわからないのに拡散するの?

 なぜ、確証が持てないような情報をシェアしてしまうのでしょうか?これは自身にも起きうることです‥
上述のような誹謗中傷はもちろん、大災害時に間違った避難経路や、間違った災害原因がシェアされたらと思うだけで非常に怖いです。
こうした誤った情報拡散の背景の1つには、みんながシェアしているから大丈夫!こんなに沢山の人がシェアしているんだし!という、人と同じことをしておけば‥という群衆行動も影響しているのではと自身は考えています。
ここでいう群衆行動とは、情報の非対称性を背景に、自分が得てない情報を、誰かの何かのシグナル(嘘か真実かはわからない)でつかんで真似し、自らの情報探索コストを削減しようとする行為です。つまり、いちいちエビデンスを掴むより、誰かの行為でそれっぽい行動を真似した方がトータルコストは削減できると思ってしまう行為です。その結果として、負の外部性が起きることも先行研究では報告されています。

*フェイクニュース規制は可能なのか?

では、このようなフェイクニュース対策は可能なのでしょうか?自身は非常に難しいと見ています。仮にフェイクニュースを拡散したら罰則を設けるなど、フェイクニュースを拡散させないインセンティブ設計をしたとします。でも、それが本当にフェイクか立証できる物って意外に少ないと思うんです。立証が難しい場合、罰則もなかなかできません。これに近い制度は、台湾でも施行されましたが、やはりそうした課題も多いようです。
大災害が起きた時のために、政府からのSNS上のサービス提供企業にどうしすべきかの議論は必須かと思います。また、災害でオンラインが何も使えない状況でも、口頭ベースで起きうることです。エビデンスに確証が持てないような状況では、冷静さはもちろん、拡散してよいか立ち止まる勇気も忘れないでおきたいです。

ここまで読んで頂きありがとうございます!
引き続き応援何卒よろしくお願い致します!
崔 真淑(さいますみ)


ちなにみ、群衆行動についての参考論文は下記です。
Abhijit V. Banerjee, “A Simple Model of Herd Behavior” The Quarterly Journal of Economics, Vol. 107, No. 3, (Aug., 1992), pp. 797-817 

また群衆行動に関連する先行研究には下記参考になるかと思われます
・例えば、Keynes(1936)は、アセットマーケットにおける「美人投票」(自分が投資したい株でなく、周囲が投資しそうな株を選ぶを選択=周囲の動向を読むことで投資を行う)が起きる事を指摘している。
・Kislev and Shcori - Bachrash(1973)でも 同じ環境の企業は、同じテクノロジーを導入しやすいことを指摘。
・その他では、同じ範囲の中で同じ要因の影響を受けやすく、同質の意思決定をしやすいとWatkins(1990)は指摘している。
・このように、当事者の意思決定に「周囲から影響を受けるというメカニズム」を通して、「結果的に周囲と同じような行動=群集行動」をとることが多数報告されています!


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