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あなたは地方で、複業起業してみたいですか〜e-加賀市民制度の持つ意味は?

いま、多くの地方は人口減少に苦しんでいる。その中で、ユニークな取り組みをしている自治体のなかには、人口増加に転じているところもある。そのポイントは、「地方のくらしやすさ」ではなく、「あなたの活躍を待っている」というメッセージではないだろうか。

東川町の奇跡

私の大学時代からの友人が、最近、東川町に家を建てた。彼女は、東京の大企業の部長さんだが、オンライン勤務をいいことに、東川町の移住お試しプランを経験したうえで、理想の家を建てるところまできた。今は北海道と東京を半々くらいのペースで行き来している。そして、いつかは東川で起業、北海道の未来のための仕事をやりたいと目を輝かせる。

北海道東川町は、移住者が増加し、人口はこの20年間で約1000人増え8600人を超えたことを次の記事は報じている。町は企業と相次いで協定を締結し、ふるさと納税額は年率2桁の伸びをみせているという。松岡市郎町長のスローガンは面白く、「前例がない、他の自治体がやっていない、予算がない」の3つの「ない」の克服を掲げてきた。

東川町はこれまでも数多くの書籍で紹介されていて、多様な人びとが影響し合い、共創し合いながら、東川らしいライフスタイルを追求しているということだ。

富山県南砺市のジソウラボ

次の記事は、富山県南砺市のジソウラボを取り上げたものだ。ジソウラボは、地域のプレイヤーが協力しあいながら、自分たちでまちづくりをしていくグループだ。これを田中市長は「街づくりの見本」と評価し、さらにメンバーが本業を持ちながら関わっていることが「複業のモデルになる」と指摘する。

地域のプレイヤーが文字通り自走することを行政が応援するやり方は、人口減少という環境下において、さまざまなメリットがあるだろう。

  1. 経済的メリット。行政が発注する代わりに、民間で自走してくれることによって、行政はコスト削減になり、事業が生まれることで税収アップの可能性もある。

  2. 自己実現メリット。地域課題の解決に向けたムーブメントは、シビックプライドを取り戻す。そこに参加することで、社会の中に自らの役割や居場所を見つけることができる。市民側にもメリットがあるということだ。

  3. 移住増加メリット。このような「市民が主体的に関われるまち」に魅力を感じる人は多いだろう。とくに都会のビジネスパーソンは、家と会社の往復の生活に、新たな意味を加えたくてワーケーションや二拠点居住を考える。こういったパワフルな個人を惹きつけるメリットもあるだろう。

田中市長はこの記事の中で、次のようにジソウラボの意義を述べる。
「南砺市は複業人材の誘致に力を入れているが、ジソウラボは複業のモデルと言えるだろう。メーンの収入源を持つ一方、複業を持ち地元の経済循環に貢献すれば、自分たちにも恩恵がある。行政としても、できる限りジソウラボを支援する」

加賀市の電子市民制度

このような「複業社会」が、いま「地方の自治体と、都会の個人が手を組んで」立ちあがろうとしている。それを制度として明確に推進しようとしているのが加賀市だ。

加賀市の宮元市長は、これまでもスマートシティに積極的に取り組んできた。そして最近、「e-加賀市民制度」の実証実験を行なったばかりだ。

いまのところ、専用コミュニティ、乗合タクシー、市内宿泊事業者のワーケーションサービスなどを利用可能ということだが、今後拡大していくという。エストニアのe-Residenceのように外国人に電子市民権を与える制度に比べると、まだインパクトが弱いが、面白い取り組みだ。

この電子市民制度が成功するためには、ジソウラボのような民間同士でつながり、自分たちの力でまちをつくっていくというプラットフォームが必要だろう。せっかく電子市民になってくれた起業家予備軍たちを「ワーケーションの消費者」にしてしまってはもったいない。

さらには、電子市民が納税した分については、電子市民会議で投資先を決めるという直接投票権を与えることも考えられるだろう。このような発展を加賀市で見ることができると楽しみだ。ちなみに電子市民の納税は、ふるさと納税のスキームを使えば可能なはずだ。

これまで行政はルールを決めたり、予算の配分先を決めたりと、地域管理のマネジメントのような仕事をしてきた。これからの行政は、地域イノベーションを促進するためのファシリテーターになる時代がくるだろう。楽しみな時代になってきた。

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