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2019年Best noteから占う2020年

2019年に投稿させて頂いたnoteを振り返ると以下のような順位でした

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「日本」という国における「金融」の在り方を平易に解説したものがトップ3を占めました。確かに上位3本については多くの人に読んで頂ければという意思が相対的に強かったと思います。極力、noteでは時宜を捉えた経済・金融ニュースを簡易に解説していますが、これら3本は日々自分が抱く所感を綴ってみたという部分が大きいです。

職業上、常に思うことではありますが、やはり市井の人々は金融に興味がありません。「なんだか取っつきにくい」という印象が先立っているのだと思いますし、それは理解できます。だから如何に時宜を捉えた経済・金融ニュースを解説してみたところでさほどPVは伸びないのでしょう。敢えて経済・金融に関連する分野だと「働き方改革」だとか「日本人の給料が伸びない理由」だとか、自身の執務環境と近いネタが伸びることも良く分かります。なお、やや本題から逸れますが、比較的名の知れた論者の方が先日noteで「日本人の給料」をテーマに一筆しているのを見かけました。正直、正視に耐え兼ねる内容であり、同氏のレピュテーションに関わる仕上がりだな・・・と思ってしまいました。雇用・賃金モノを計数交えて議論するのは玄人筋が沢山いるので、自身が門外漢である場合、軽い気持ちで手を出すのはお勧めできません。私も慎重に扱うべきテーマと常に思っています。ひとつ老婆心ながらアドバイスをすると、「海外と比べて高いか、安いか」を議論する場合、円貨に倒す時に使用している為替レートの正当性まで説明できないならば止めた方が良いと思います。そうした知見を欠きながら「シリコンバレーでは~」は結構、勇気のある主張と思います。また、その他の論点として日本人の給料はジョブセキュリティにかかる「オプションプレミアム」(労働者から見ればプレミアムの払いでディスカウントが効いている状態)があります。単に円転して額面だけ比較しても荒唐無稽です。

話が逸れました。要は、経済や金融はさほど興味が無いですが、誰も一枚噛みたいテーマなのだと思います。だからこそ理論的な根拠や実際の効果などを考えず政府・中銀の採る裁量的なマクロ経済政策を評価したがるという面があると思います。例えばアベノミクスと称される政策運営の下、円相場は対ドルで+50%以上円安になりました。株も上がりました。株が上がって損する人はいませんからこの時点で支持する人は圧倒的多数です。この政策に少しでも批判的な向きには直情的な罵声が浴びせられたのが11~15年の日本経済だったように思います(今はだいぶ変わった印象です)しかし、それほど円安になった結果、日本から世界への輸出数量がどれほど増えたか知っている人は多分多くないでしょう(殆ど横這いです)。

膠着相場だからこその株高

これ以上、掘り下げると株価上昇をほめそやして「風が吹けば桶屋が儲かる」方式の反駁が予想されるのでもう止めておきます。しかし、19年noteで2番目にPVの多かったテーマである「日本人の為替に対する執着は異常」というのは一定の事実だと思います。それだけに過去2年間、史上最小レンジの下で為替相場が推移したのは日本の企業・家計部門にとって非常に幸せなことだったように思います。

「円安と株高の相関が切れた」という議論をよく目にしますが、為替が動かない、つまり「為替リスクが極めて小さい」ことはどう考えても企業収益ひいては経営にとってポジティブでしょう。為替が動いていないことそれ自体が株高の一因だと理解しても差し支えないと思います。いや、むしろ、輸出数量の増加を伴わない経済構造となった今、円安よりもこうした膠着相場の方がよほど株高との親和性が高いと私は思います。

2020年に見ておくべきテーマ:CBDCなど

私、個人としては昨年、リブラに関する共著を発刊させて頂きましたように、デジタル通貨、とりわけ中銀デジタル通貨(CBDC)は2020年に盛り上がる不可避のテーマだと思います。この点、経済・金融に距離を取りがちな市井の人々にとっても「なんだか面白そう」という印象があるのか、私の2019年のnoteの中でも総じてPVが大きなネタでした。リブラの功罪はあると思いますが、CBDC議論が焚き付けられた点で、その存在感は決して小さなものではなかったなと思いました。正直、もう「働き方」であるとか「初任給」とか「残業」とかいったネタは本質的な解決策(終身雇用&年功賃金の打破)といったオチが割れており、主要論点もテーブルに出揃っているのであとは淡々と世論が熟するのを待つステージに入ったと思います。日経COMEMOにおかれても、こうしたテーマだけではなく、せっかく日本経済新聞の軒先があるので、そういった経済・金融といった王道分野で新味のあるものを盛り上げていく役割を期待したいなと思います(その意味で2019年にリブラがお題にされていたのは、とても良かったと思っています)。



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