見出し画像

バイアスを乗り越えて学び続ける人材なら、いつでも誰とでも働ける

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

※ この記事は以下の募集企画への寄稿です。

今年の4月から高年齢者雇用安定法、いわゆる「70歳定年法」が施行される見通しです。これまでの定年の廃止や延長などに加え、他企業への再就職実現やフリーランスや起業した方への業務委託など、柔軟な働き方を選択した場合でも就労機会を確保する努力義務が追加されます。

日本の高齢化が進むにつれて、社会保障費の増加が課題となっています。元気で就労意欲のある方々が社会保障の支え手側に回れば、膨らみ続ける社会保障費の削減に好影響があるでしょう。また、2030年には労働需要に対して644万人不足する(パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」)と言われています。ここでは「64歳男性の労働力率が69歳まで維持され、60代女性の70%が働くようになると、働くシニアは163万人増える」という試算もされており、社会保障費の削減と共に人手不足の解消にも一役買いそうです。

独立行政法人労働政策研究・研修機構による「60代の雇用・生活調査」(2020年3月31日)では、「2019年6月時点で、収入を伴う仕事をしていた人は、59.0%(60代前半70.2%、男性69.1%)で、このうち会社や団体等に所属している者が76.5%を占める」との結果が出ています。すでに6割ほどの60代が働いており、「60代前半・後半にかかわらず今後の就業を希望するものは半数以上」であることも示されています。高齢者雇用の仕組みについても、今後「希望すれば何歳まででも働ける仕組み」を望む意見が最も多い(41.7%)とのことです。

労働市場というのはつまるところ求職者と雇用者のマッチングですから、企業側が多様な働き方に対応することでマッチング率があがることも期待されます。今後、ジョブ型雇用が一般化するにつれてフルタイムで会社から期待されることをすべてこなす総合職だけでなく、明確な成果を基準に働き方を決めるような形も全世代で増えていくことでしょう。

今後活躍するだろう人材を考えてみると、シニアに限らず以下のような素養を持った方ならばいつでも誰とでも働けるのだろうなと思います。

・謙虚であること
 人は出世したり、成功体験が積み重なると驕りが出てくるものです。刻々と状況が変わる現在のビジネス環境においては、過去の成功体験に囚われてしまうと大失敗してしまうこともあります。常に「いま目の前で起きている事実」に向き合う謙虚な姿勢が大事です。

・人から学べること
 変化が早く正解のないビジネスの世界では、あらゆるところから学び続ける必要があります。たとえ年下の方であっても、意見をしっかりと聞き、そこから学びを得る。これを通じて自身をアップデートし続けることで、常に即戦力でいられるのだと思います。
 そのための制度を企業が整えることも期待されます。たとえば、リバースメンタリング制度です。これは1999年に米ゼネラル・エレクトリック(GE)が初めて採用したと言われており、ジャック・ウェルチ会長(当時)は自ら37歳のメンターに教えを請うたそうです。

 台湾政府では内閣の大臣が35歳以下のソーシャルイノベーターをメンターに任命する制度を採用しています。若いメンターが大臣に新しい方向を示すと共に、大臣たちは若い人たちに政府がどういう仕事をするのかを教えます。最年少のデジタル担当大臣として有名なオードリー・タン(唐鳳)氏は、前デジタル大臣の蔡玉玲氏の元でリバースメンターをしていました。その成果が認められ、現在のポジションについているわけです。

・自身のバイアスを認め、乗り越えられること
 どんな人でもバイアス(ステレオタイプ)を持っています。最近では無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)とも言いますが、育ってきた環境などの影響を受け、当人にとっての「常識」が実は偏っているというようなことです。
 バイアスそれ自体は悪いことではありません。ある種の高速連想の思考プロセスであり、脳が効率的に判断するための助けとなっています。特に日本のようなハイコンテクストな文化においては、同じバイアスを持った者同士による「ちょっとアレもってきて」で通じるのは話が早いわけです。
 しかしながら、多様な価値観や働き方や属性の人が働く環境においては、摩擦の原因ともなります。特にマイノリティからすると、わかってもらえない、大切に扱ってもらえていないと感じる原因になり、声も上げにくいため労働意欲そのものに影響を与えます。これは適切なトレーニングにより乗り越えられるものですので、すべての会社で取り組むべきテーマだと思います。

残念ながら、今後の国内の労働力減少は確定した未来です。すべての方が幸せに働ける社会に向け、今からできることをしていきたいですね。

---------
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!

タイトル画像提供:mits / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #一緒に働きたい60代社員とは

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?