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神保町ってどんな街?

神保町の書泉グランデが日経MJに取り上げられていました。皆さん、書泉グランデをご存知ですか?

御茶ノ水から駿河台下の交差点まで坂道をおりてくると前方のビルの上に見えてくるのが「鉄道 アイドル プロレス」と書かれた看板。そうです、それが書泉グランデです。
「鉄道 アイドル プロレス」。かなりどストレートなコピーですね。書泉グランデはこの3つのジャンルだけでなく、バスや数学などマニアックなテーマの選書で知られる「趣味の本屋」。専門書や、マニアが自費出版した同人誌まで取り揃えています。そう、書泉はオタクの天国なんです。

記事には大内学さんという騎士道や城など中世ヨーロッパの専門書をこよなく愛する書店員が、中世ヨーロッパ史のニッチな専門書を売りまくった話が紹介されています。大内さんはフェアの最中は甲冑を身に着け売り場に立つそうで中世愛がほとばしっていますね。

今月は書泉グランデがある神保町の街がいかにスゴイ街なのか書いてみたいと思います。

1946年の博報堂

神保町は広告会社博報堂の創業の地でもあり、自分も入社した93年から田町へ移転する97年まで4年間神保町で働いていました。新入社員時代に右も左もわからないまま働いていたわけですが、神保町という世界的にも稀有な存在の街で20代を過ごせたのは貴重な体験だったと思っています。

街全体が巨大な書店

神保町は世界的に稀有な街です。狭いエリアに200軒近い古書店、新刊書店がひしめいているんです。明治時代に明治、中央、日大など多くの大学がこのエリアにうまれ、その周辺に書店街が形成されたということですが、世界的に見ても神保町のような書店街はレアで、世界で最も本がある街といっても間違いないようなのです。まさに、街全体が巨大な書店なんです。

レクター博士の言ってる意味がわかる

人は馬鹿なので自分の欲望になかなか気づくことができません。「羊たちの沈黙」の中でハンニバル・レクター博士は「欲望は目の前にそれが現れると発動する感情」だって話をします。具体的なものが目の前に現れると、人はそれまでそれを欲しいなんて一言も言っていなかったのにかかわらず、都合よく「そうそう、それが欲しかったの」と言ってしまうんですね。

本屋で見る風景は情報の大海です。まさに、さまざまなタイトルが目の前に現れて人の欲望を刺激するのです。

本屋に行くとよく買うつもりのない本を買ってしまいますよね。話題のビジネス本を買いに行ったんだけど、偶然目に入った宇宙に関する本も買ってしまったなんて、そんな体験は誰にもあるのではないでしょうか。

それって、まさに眼の前に宇宙に関する本が出現することで、そうか実はこれが欲しかったんだと気づきが生まれるわけです。

書店は自分が興味をもった本を買うことで好奇心を満たす場であると同時に、自分が気づかない自分の好奇心を発見する場でもあるわけですね。

そして、人って自分の好奇心に気づくとすごく嬉しいわけです。

神保町は街全体が書店なわけで、歩けば歩くほど、あ、これも欲しかったという発見がある街なんですね。

阿部サダヲの叫び声が聞こえる

宮藤官九郎のドラマ「不適切にも程がある」見ましたか?
面白いですよね。昭和の価値観を体現する体育教師役の阿部サダヲが令和の世にタイムスリップ、ガチガチのコンプラ社会に物申す! 
新旧の価値観がせめぎ合うシーンを視聴者として客観的に眺めるとどっちもどっちなところがあって、社会の常識って何なんだろう?と考えさせられます。

神保町という街も新旧がせめぎ合う街です。200軒近い書店のうち170軒ほどが古書店。新刊書店と古書店が一つのエリアに混在しているのは神保町だけ。なにかテーマを絞って本を探せば、新刊も見つかるし、すでに絶版になった過去の本も同じ町内で見つけることができるわけです。

ルネッサンスが古代ギリシア・ローマをリファレンスして新たな文化を作ったように、阿部サダヲの昭和の叫びが令和の人に響くように、新刊書と同時に古書を掘ることができる神保町の街は過去から情報と現代の情報が入り交じってケミストリーがおきやすい街なんです。

ブリコラージュが起きる

ブリコラージュという文化人類学の概念が好きです。目的があって集めたわけではないモノが組み合わされて役に立つモノになるということです。偶発性を伴うのに、効能があるものが生まれる、そんな行為といえばいいのかな。ブラジルのある部族はアマゾンのジャングルの中で、何に使うか考えずに木の枝などを拾ってくるそうですが、それが後々役に立つ道具になるそうです。

ある日、バラバラのものが組み合わされて役にたつものになる

情報も同じだと思うのです。ジェームス・ヤングは名著『アイデアの作り方』でアイデアは既存のアイデアの組み合わせにすぎないと書いています。
意外な組み合わせが偉大なアイデアに生まれ変わるんです。

僕は神保町という街は情報の交配が起こりやすい環境でもあると思います。冒頭に紹介したように、書泉グランデを筆頭に神保町の街は様々なマニアックな情報が混在しているオタクの天国です。書店だけではありません神保町にはスキーショップや楽器店、それからカレーの街としても有名です。

そもそも、多くの本屋さんはどんなに小さな規模であっても世界を構成する要素を包含しています。
ビジネス書、野球の本、ガーデニングの本、宇宙の本、恋愛小説、哲学書、音楽の本・・・・・・。本屋にはあらゆるジャンルの本が混在していて、小さな本屋であれば10分で全体を見渡すことが可能です。

街全体が本屋の神保町はあらゆるジャンルの本に触れることができるし、しかもそれぞれが深い! 広くて深い情報環境。そこはジャンルを超えた情報の掛け算が起こりやすい場所。そんな街が神保町です。


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