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EV普及はコロナ前後の中国・香港で最も変わった風景

進む中国の脱ガソリン車

三菱自動車が中国の自動車生産から撤退する方針を決めたという。近年、中国市場では海外メーカーの苦戦が続いている。特に、中国系企業のシェアの伸びが大きく、今や世界最大の市場となっている中国の内需を背景に力をつけている。
特に、EVによって自動車開発のハードルが下がったことも大きい。自動車は内燃機関を作るための技術的な問題と高品質な素材や部品を製造できる関連企業群を持つことがハードルを高めていた。しかし、EVによって内燃機関を開発する必要がなくなると部品点数も大きく減り、部品間の形状・機能の擦り合わせの必要性も薄くなる。そうすると、パソコンのように必要な部品を組み合わせて完成車を作るモジュール化を進めることができるようになる。

新興国は「イノベーションのジレンマ」を狙い撃ちしてくる

内燃機関からEVにシフトするということは、それまで大量の部品を生産してきた下請け企業の仕事がなくなるということでもある。既存の自動車メーカーがEVに一気に切り替わることができない理由の1つでもある。実際に、欧州や米国ではEVシフトを宣言したものの、失業問題で頭を悩ませる事態に陥っている。

中国は、欧米や日本のジレンマの隙をうまくついてきた形だ。まさしく、教科書通りの「イノベーションのジレンマ」だろう。「イノベーションのジレンマ」とは、クレイトン・クリステンセンが、巨大企業が新興企業の前に盟絵を失う理由を解き明かした理論だ。大企業にとって、新興の事業や技術は、小さく魅力なく映るだけでなく、その技術が市場に広がることによって自社の既存の事業を破壊する可能性がある。そのため、大企業は、新興市場への参入が遅れる傾向にある。新興企業にとっては、破壊的イノベーションで既存市場を壊す機会であるので、わき目も降らずにすべての経営資源を投入することができる。

ゲームが変わる市場は機会にあふれている

「イノベーションのジレンマ」で恐ろしいことは、わかっていても防げないことだ。大企業の経営者で「イノベーションのジレンマ」を知らない人は、ほぼ存在しない。しかし、驚くほど多くの企業経営者が「イノベーションのジレンマ」に陥って、新興企業に後塵を拝すことになる。

EVに関しては、インドの存在も軽視できない。自動二輪は、10年前まで、日本企業でほぼ市場が独占されていた。しかし、現在はトップのホンダとヤマハの次には HERO(インド)、TVS(インド)、Harley-Davidson(米国)、Royal-Enfield(インド)と続いている。二輪で起きた下克上が四輪でも起きないとは限らない。なにせ、インドは世界第3位の市場規模を持つ。

今年の3月に香港を中心に周辺の都市も廻ったが、コロナ前と最も違った光景はEVの普及だった。そして、中国のEV戦略は着実に東南アジアにも広がっている。華僑ネットワークを中心にEVの市場は確実に大きくなっている。

EVだけではなく、世界にはゲームが変わろうとしている市場が数多くある。大企業には難しいからこそ、日本の中小企業やスタートアップは挑戦の機会にあふれているともいえる。中国やインド企業の勢いに押し負けない、日本企業の挑戦が必要だ。

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