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同一労働同一賃金と女性活躍の関係性

今朝の日経新聞の記事で掲載されていたとおり、日本のジェンダー・ギャップ指数が、調査対象国の146か国中118位だったようです。過去最低であった昨年の125位よりは上昇しているものの、依然として低い位置にいると言わざるを得ないでしょう。

この記事でも書かれているように、賃金格差の是正は大きな課題であり、そのためにも同一労働同一賃金は重要です(ただ、後で述べますが、この記事でコメントされている方のコメント内容はやや不正確です。)。

日本の同一労働同一賃金政策の狙い

働き方改革実行計画では、「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」という表題で同一労働同一賃金に言及されています。

これだけ見ると、大きく「非正規雇用政策」とも捉えられます。

それはそれで間違いではありません。実際、同一労働同一賃金は、非正規雇用の待遇を改善し、消費を拡大し、成長と分配の好循環を図ることが一つの目的でもあります。

同一労働同一賃金政策と女性活躍

しかし、働き方改革実行計画の同一労働同一賃金の項目には、以下のようにも記載されています。

女性では結婚、子育てなどもあって、30 代半ば以降自ら非正規雇用を選択し ている方が多い。非正規雇用で働く方の待遇を改善し、女性や若者などの多様な働き方の選択を広げていく必要がある。

働き方改革実現会議「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)より

整理すると、働き方改革実行計画では、「女性は非正規雇用で働いている人が多い」⇒「非正規雇用の賃金待遇差を是正する」⇒「結果、女性の賃金格差が是正され、労働参加への意欲が高まる」ということを狙っています。

つまり、労働人口減少が見込まれる日本において、非正規雇用を自ら選択する人々の待遇差を改善し、労働参加してもらおうという社会政策的側面もあるのです。

「成果による評価で処遇する」のが同一労働同一賃金?

ところで、冒頭述べた日経新聞の記事では、「年功や雇用形態によらず、成果による評価で処遇する同一労働同一賃金が浸透する国では格差が広がりにくい」というコメントが掲載されています。

確かに、日本が同一労働同一賃金を進めるにあたり参考にした欧州では、「人」によって待遇差をつけるのは平等原則に違反するという考え方から、同一労働同一賃金政策がとられているようであり、同一労働同一賃金が浸透していれば、格差は広がりにくいとはいえるかと思います。

しかし、「評価で処遇する」のが同一労働同一賃金かというと、それはやや誤りかと思われます。

少なくとも、日本の同一労働同一賃金は、日本の雇用慣行にも配慮した規定ぶりであり、
① 業務の内容
② 当該業務に伴う責任の程度
③ ①、②の変更の範囲、配置の変更の範囲
④ その他の事情
に照らして、待遇差が不合理であるか否かを判断することになっています。

「責任の程度」との関係において、評価制度が参考にされることがありますし、ジョブローテーションの範囲なども考慮されますが、基本的には「どんな仕事をしているか」がベースの仕組みです。

したがって、「評価で処遇する」云々というのは、同一労働同一賃金と無関係とまではいえないとしても、ダイレクトに関係してくるものではないと思われます。

労働人口減少も見据えた持続的な成長を視野に入れた改善を

さて、後半、記事へのいちゃもんをつけてしまいましたが、当然ながら非正規雇用の待遇改善、ひいては女性の賃金格差の解消は、経済的観点からも、平等原則という法的観点からも、速やかに対処すべき課題と言えます。

また、将来的な労働人口減少も踏まえ、女性を含めた多様な人材の積極的な労働参加を図ることは、日本企業が持続的に成長していくためにも不可欠であり、企業の経営層においては、広い視野に立ったうえでの対応を期待したいところです。

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