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『旧大宮区役所フォーエバー』 Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈|《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》|さいたま国際芸術祭2020

11月15日をもって、キュレーターとして参加していました『さいたま国際芸術祭2020』が無事に閉幕致しました!

コロナ禍によって一時は開催も危ぶまれた『さいたま国際芸術祭2020』。
東京オリンピックが開催されるはずだった2020年、全国各地で芸術祭も百花繚乱となるはずでしたが、横浜トリエンナーレそしてさいたま国際芸術祭2020といった数少ない芸術祭のみが実施される結果となりました。

そんななかで、紆余曲折ありすぎて開幕しても一抹の不安を頂いていましたが、大幅に会期短縮となった1ヶ月の間にクラスターなども発生せず、それでいて本当に多くの方に来場いただき、そしてアート関係者からもさいたま市民のかたからも両方からの高い評価を頂けたこと、とても嬉しいです。

限られた予算という背景もありつつ、コロナ禍の芸術祭なので祝祭感も抑える為に広報活動はかなり控えめの船出でした。しかしながら、どういう意味かはさておき「思ってた以上に相当いい!!」という芸術祭の評価がSNSで響き渡り、閉幕が近づくに連れて連日予約上限(コロナ禍の為、同時入場者数を制限ました)があっという間に埋る人気となりました。

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(私がキュレーション担当の森永泰弘「POLLINATORS:Life of Hmong」も物凄い行列が全く途切れず・・・・!)

コロナ禍で開催した芸術祭に感じた事はとても多岐に渡るので、別の機会にしたためさせて頂きたいと思いますが、『さいたま国際芸術祭2020』の僕の担当作品のご紹介に話しをもどして、どんな背景で僕がキュレーターになり、そしてどんな考えでキュレーションしてきたかについて、下記にまとめました。

本エントリーでは、参加頂いた担当アーティストについて、ご紹介していきたいと思います。今回は、Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈|《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》についてご紹介します。

\兎に角、まずはこの映像作品を再生して欲しい!!!!!/

旧大宮区役所フォーエバー

Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈|《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》の選出は、もう一重に、これから始まったと言って過言ではないです!

空族が初のクラウドファンディングに"怒りのデスロード方式"で挑む!全編タイ・ラオス撮影を敢行!『バンコクナイツ』(ロカルノ映画祭若手審査員・最優秀作品賞受賞)

2011年公開の映画『サウダーヂ』で、甲府市を舞台に、土方/ラッパー/在日外国人達を中心に、地方社会を描き、ある意味今起こっている本当のグローバリゼーションを観客の眼前に突き立て、浮かれる”中央”に一撃を喰らわした「映像制作集団・空族」。

一気に世界的な評価を得た後に、何年も準備に費して遂に製作された映画が、この『バンコクナイツ』でした。『サウダーヂ』に打ち震えていた自分にとって、この『バンコクナイツ』の製作をMOTIONGALLERYのクラウドファンディングでサポートできることの感激といったら無かったのですが、出来上がった作品もこれまたすごくて、バンコク、イサーン(タイ東北地方)、ラオスから、そこに横たわる国際問題から国内問題までを開いていきつつ日本と東南アジアとの関係性も突きつけるような凄い映画でした。

その映画の凄みや詳細は、こちらの記事をご覧いただくのがおすすめなんですが、映画を見れば見るほど、その音楽にも興味が湧いてきます。

富田:要するにイサーンの音楽は、ものすごいレベルミュージックでありプロテストソングなんだと。それを知って、その土地の持つ歴史や音楽や、つまりその土地の文化に『バンコクナイツ』は鼓舞されていったんです。それで『バンコクナイツ』の中であれだけたくさんの音楽が流れるようになったというわけです。

相澤:もうひとつ、劇中では「モーラム」っていう音楽も使われていて、これはラオス発祥の音楽なんですけど、イサーン・ミュージックといっても過言ではない。このモーラムについてもいろいろ調べて、日本でタイ音楽の再発シリーズを監修したりしてるSoi48(宇津木景一&高木伸介。『バンコクナイツ』の音楽監修も担当)っていうDJユニットがいるんですけど、彼らによれば、モーラムは歌じゃなくて語り芸なんだと。

富田:「モー」は「達人」、「ラム」は「語り」っていう意味だから、モーラムを直訳すると「達人の語り」なんです。要は、トラックに合わせて即興で語り芸をする。まんまヒップホップのフリースタイルと同じなんですね。

相澤:モーラムの起源はラオ族の精霊信仰、つまりシャーマニズムにあるとされているんですけど、そんな伝統音楽が、現代でもポップスやテクノと融合して広く聴かれているんです。マニアックな民族音楽好きの人たちじゃなくて、一般の人たちが普通に聴いて踊れるダンスミュージックとして。それを知って、これはものすごい文化なんじゃないかって。

そして、渋谷WWWで行われた『バンコクナイツ』のクラウドファンディング発表イベントでも、劇場公開のイベントでも、イサーン・ミュージックのステージがSOI48によって行われたりしていて、興味がどんどん深まってしまいました。

そんな背景もあったのですが、まずは今回の自分のキュレーションの軸としての国際芸術祭の「国際性」をアジアに置こうと思っていたので、イサーン・ミュージックを芸術祭でパフォーミングすることができれば、

ベトナム北部のシャーマンによる厄除儀礼を扱った視聴覚インスタレーションである、森永泰弘|《POLLINATORS:Life of Hmong》との共鳴もあるだろうし、

そのパフォーマンスも、拡声器を耕運機に備え付けた巨大なサウンドシステムを移動させながら打楽器隊が練り歩く『ピン・プラユック』の形で実現できれば、イサーン地方では出家や冠婚葬祭用として演奏されるスタイルなので、まさに芸術祭のテーマ「花」のまた別の側面にアプローチできると考えました。

改めて調べてみると、山口のYCAMで過去に演っている!

ということで、早速、このパフォーマンスをアレンジしていた、Boidの樋口さんに相談して進めることになりました。

問題は、『ピン・プラユック』を実現する為には、爆音でまちを練り歩ける環境を、大宮の中心地で生みださなくては行けないこと。それには警察の協力もそうだし、駅前の車道を通行止にしたりしなくてはいけない。そんなの実現不可能じゃんとおもわれる障壁でしたが、市役所の方などにヒアリングを重ねた結果、毎年大宮で行われている「アートフルゆめまつり」とドッキングするのがいいのではないかという結論になりました。

さいたま市民有志が企画・運営している大宮駅東口周辺のまちなか各所を会場として、音楽を中心とするアートで人とまちをつなぐイベントであり、年に1回だけ駅前の車道を通行止にして、演奏パレードが行われるイベント。しかも芸術祭の期間とも被る!早速2019年春、開催された「アートフルゆめまつり」を下見にいきました。「こんな距離をしっかり練り歩けるなら凄いことになる!しかも市民参加型の芸術祭にしたいというお話にも合致するじゃん!」と凄く自分の中でピースがはまった瞬間でした。

それから、何度も「アートフルゆめまつり」の実行委員会の会議に出席させていただき、ご説明し、参加させていただく承諾を得ることができました。本当にありがたかった。

そして、SOI48のプロデュースにより、電気ピンを発明し冠婚葬祭のパレードの定番スタイルとなったピン・プラユックを生み出した、まさに開祖とも言えるトーンサイ・タップタノンさんに来日してパフォーマンスしていただけることになるという物凄い座組が出来上がりました!

もうこれは当日がたまらなく待ち遠しいと思っていた、そんな矢先に起こったのがコロナ禍・・・。芸術祭自体が無期限延期となってしまいました。コロナ禍が中止の理由なので、芸術祭が時期変更の上開催されたとしても、ご高齢のトーンサイ・タップタノンさんの来日は不可能。まちなかをパレードするのも環境再設定は無理となりました。本当に残念無念で仕方なかった。

なので、芸術祭が開催できることになったというお話を受けた時に真っ先に考えたのは、その環境の中で、Soi48 / Monaural mini plug に協力いただきどう再構築して作品にするかという事になりました。

まちなかでのパレードは無理だし、観客を入れてのパフォーマンスも無理でしょう。それでも、ピン・プラユックを広めたい。
色々と考えた結果、その結論として「無観客の状態で、作品が展示されている区役所の中を、ツアーする様な形でパフォーマンスし、映像作品として収める」ことにしました。

さいたま国際芸術祭で展示された作品の披露の場所にもなりツアーの様な面白さも生み出せるし、なにより芸術祭が終わると解体される、会場・旧大宮区役所の最後の姿を映像に残すことはとても重要なものになるはずであるという思いもありました。

そして、2日がかりの撮影で、完成したのがこちら・・・・!

《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》

芸術祭とタイ伝統音楽との融合をオンラインで体感!

作品の概要はこちらの芸術祭のHPにまとめてありますが、
キュレーターとして書かせて頂いたキャプションはこちら。

タイ音楽を主軸に世界各国の音楽を発掘・収集するユニット「soi48」が、 ピン・プラユック というタイ東北地方・イサーン発祥の伝統的な爆音ローカル・ダンス・ミュージックを日本で唯一演奏するバンド『Monaural mini plug』と、日本の民謡を掘り下げそのオリジナルな魅力の普遍性を現在に向けて放ち続けるDJユニット俚謡山脈を迎えて制作した映像作品をオンラインにて公開いたしました。無人となった暗闇の旧大宮区役所を舞台に、爆音とともに展示作品を巡りながら練り歩く様は、芸術祭ツアーのようでもあり、 ピン・プラユックでもある不思議な体験となるはずです。

Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈の3チームの素晴らしい演奏、そしてパフォーマンスによって生み出された映像作品《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》は、なんど見ても、何度聞いても素晴らしい。

芸術祭が閉幕してから、担当作品の撤収作業に行く度に、どんどん姿が変わっていく旧大宮区役所を眺める度に、《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》を再生したくなります。この作品が本当にあって良かったと改めて実感しているここ数日。

出家や冠婚葬祭用として演奏される『ピン・プラユック』。
《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》は、旧大宮区役所という建物の最期に捧げられたパフォーマンスだったのかも知れません。

Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈|《Chokketsu, ISAN, SAITAMA》
は、芸術祭は閉幕しましたが、ずっとさいたま国際芸術祭のYOTUBEチャンネルで公開され続ける作品になります。是非、ヘビーローテションしていただき、その音楽や映像を楽しみつつ、旧大宮区役所の記憶に想いを馳せていただけますと幸いです。

Soi48 / Monaural mini plug / 俚謡山脈

・Soi48
旅先で出会ったレコード、カセット、CD、VCD、USBなど音楽フォーマットを問わず発掘し紹介する2人組DJユニット。空族による映画『バンコクナイツ』の制作に参加し、毎日映画コンクール音楽賞を受賞。2017年にはタイ音楽と旅についての著書『TRIP TO ISAN:旅するタイ・イサーン音楽ディスクガイド』刊行(DU BOOKS)。エム・レコードのタイ音楽シリーズの監修、フジロックフェスティバルや海外でのDJツアー、トークショーやラジオ出演を通してアジア音楽と旅の魅力を伝えている。
http://soi48.blogspot.com

・Monaural mini plug 
タイの祝い事に欠かせない爆音BGMを演奏する、日本唯一のピン・ケーン・プラユックバンド。
現地の人気ピン奏者テック・ラムプルーンをはじめ、メコン河周辺の音楽家のもとへ足を運んで身につけた本場仕込みのグルーヴを、タイから輸入した220Vの手押しサウンドシステムに乗せ、現地の祝宴を完全再現する。 東京を拠点にライブハウスや屋外フェス、公園やレストランで活動中。
2018年初のフルアルバム「SAMURAI MEKONG ACTIVITY」をPヴァインよりリリース。
2019年 FUJI ROCK FESTIVAL’19出演。
https://monaural-mini-plug.jimdofree.com/

・俚謡山脈 (Riyo Mountains)
世界各国の音楽がプレイされるDJパーティ「Soi48」内で活動する日本民謡を愛する2人組DJユニット。日本各地の民謡を収集/リサーチし、DJプレイしたりCDやレコードの再発を手掛けたりしています。主なリリースにMIXシリーズ「俚謡山脈 MIXVOL.1」 「VOL.5」CD/レコード監修「田中重雄宮司/弓神楽」「境石投げ踊り保存会/境石投げ踊り」「木崎音頭保存会/クラーク内藤/木崎音頭」「葛西おしゃらく保存会、他/おしゃらく」など。農民ダイナマイト(山梨県)、大和町八幡神社大盆踊り会(東京)など各地のパーティーにDJで参加。BOIDマガジン連載「俚謡山脈の民謡を訪ねて」NHK FM「DJ俚謡山脈の民謡沼めぐり」


頂いたサポートは、積み立てた上で「これは社会をより面白い場所にしそう!」と感じたプロジェクトに理由付きでクラウドファンディングさせて頂くつもりです!