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早回し的視点とスローモーション的視点を組合わせて「仕事解像度」を上げよう

 Potage代表 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。仕事に育児にと追われ続け、タイムマネジメントに頭を悩ませる日々です。

 さて今日は、下記のCOMEMOのお題を元に投稿します。

 「タイパ」という概念があるのですね。じっくりと没入することが大事なエンタメコンテンツを倍速で消費するという感覚が正直分からないなと思う昭和生まれのおじさんな自分ですが、よくよく考えてみると、ちょっとだけ身に覚えがあることに気が付きました。

 例えば、僕もパーソナリティをつとめている「Voicy」のコンテンツを聴くとき、僕は「1.2倍速」を選択しています。YouTubeのネタ動画をみるときも、1.2-1.5倍速で消費することが多いです。その多くはスキマ時間に消費され、限られた時間の中で消費を完結する目的で倍速設定をしているのです。

 そしてもうちょっと考えてみたときに、僕がかつて「冒涜だ」と思っていた早回し再生を使いながら消費している「エンタメコンテンツ」があることに気が付きました。それがサッカー中継です。

 珍しくエピソードトークがメインになりますが、ちゃんとビジネス的な気づきが最後シェアされるので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。

本記事の下敷きになったVoicy放送です。Voicyでは毎日役に立つかもしれないトークを更新しています。ぜひチェック下さい。

https://voicy.jp/channel/2789

趣味だったサッカー観戦を仕事にして起きた変化

 突然ですが、僕は「浦和レッズ」というサッカーチームが大好きです。今年でクラブ創設30周年、埼玉県出身の僕は今年42歳になるわけですが、Jリーグブームが起きたときに思春期だったこともあり、自分の人生の3/4もの時間、ずっと浦和レッズを見守り続けてきました。

 そんな僕に今年2022年、大きな転機が訪れました。純然たる趣味だったサッカーが仕事になったのです。今僕は「浦研プラス」という浦和レッズを評論するメディアを主宰する島崎英純さんが毎週月曜日夜21時から配信しているYouTube番組の進行アシスタントをしています。2022年のシーズンが開幕した直後にこのお仕事がスタートし、サッカー番組の伴走をすることになったのです。

 浦和レッズが大好きな自分にとっては万々歳な出来事なわけですが、そこから僕の日常に大きな変化が訪れました。浦和レッズの試合を毎試合欠かさず観ることになったのです。

 去年の6月に長男が生まれてからというもの、育児や家事などの対応もあって、試合が行われる土日や平日夜に試合をみづらくなりました。観られる試合は生でみるようにしつつも、隙間時間で90分をとばしとばしでみたり、タイミングがあわない試合はダイジェストで観たりという具合だったのです。妻はまったく気にしていなくて「試合観ればいいじゃない」と言ってくれていたのですが、後ろめたさのようなものもあり、妻の前でサッカーを観ることができずにいたのでした。

 しかし今年からは違います。「仕事だから」という言い訳が僕の中で立つようになったことで、妻の前でリビングのプロジェクターに映して堂々と試合を観られるようになりました(妻は、サッカー観戦への後ろめたさが僕になくなったことが、この仕事を引き受けていちばんよかったことだと日々言ってくれています)。

「禁断の1.5倍速再生」で気が付いた早回しの効果

 ただ、とは言えすべての試合が生で観られるかというと、仕事の繁忙具合や家事育児の都合で、どうしても観られないタイミングもでてきてしまいます。そうすると時間をずらして観ることになるのですが、タスクがつまっているときには(5試合に1試合くらいの割合ですが)1.2倍速~1.5倍速で試合をみるようになりました。

 これは本来、僕にとっては禁じ手でした。倍速を変えて試合を観るなど、サッカーへの冒涜だと思っていたのです。しかし、YouTube配信をやる以上は、試合の全貌をきちんと把握してから臨まないと視聴者も目が肥えているので、見抜かれてしまいます。なんとか頑張って試合を全部みたい、けど時間の制約はある。もう、背に腹は代えられません。もろもろ考えて「しょうがない!もう早回しして試合をみよう」となるわけです。

 ただ、早回しで試合を観ることで、面白いことに気がつきました。早回しして試合をみると「試合の観方が多面的になる」ということです。

 例えば、サッカー中継でも普段使われている演出に「スローモーションでのリプレイ」があります。スピードがゆっくりになるだけで「倍速が変わる」こと自体は早回しと変わらないもになります。

 これにどういう効果があるかというと、一人の選手の動きや、瞬時のプレーにクローズアップして迫ることで、プレイひとつひとつの解像度を上げてチェックできる効果があるのです。

 例えばシュートをうつモーションやパスを出す動きがみれますし、いくつかのパスがつながったときに、各選手がどういう動きをして、どういうテクニックが使われていたかを観るのに、スローモーションは有効です。だからこそ古くからスポーツ中継の演出として駆使されているわけです。

 一方で、早回しでサッカーを観たときに何が起きたかというと、試合の状況を俯瞰してみることができるということに気が付いたのです。ゴールが生まれたときは、だいたいその30秒前くらいから再生すると、ゴールに至るだいたいのプロセスが見えるのですが、早回しにして同じ30秒という時間を費やすと「どういう流れが全体として起きてゴールに至ったのか」の全体像をみることができるのです。

 例えば、ゴールキーパーからボールが出て、それを何人の選手がどのようにつないで、誰と誰のポジションが入れ替わって、誰がパスコースをつくって、相手はこのようにつり出されてスペースが生まれ、結果的にチャンスシーンに至ったという流れの大枠を確認できるのです。

 サッカーはパスをつないで、ゴールに近づいて、シュートを決めるスポーツです。チャンスに至るまでの大枠の流れを理解することは、サッカーの構造を理解するのに、とても役に立ちます。早回しだと、スローモーションのように、1人の細かい動くをじっくり分析することはできませんが、サッカーの全体感をとらえる、つまり俯瞰してみるという観点でいえば、結構役立つわけです。

早回し的視点とスローモーション的視点の組み合わせで仕事の解像度を上げよう

 これはとても興味深い事実だし、普段の仕事にも応用できる話だと感じています。

 例えば職場で、大きなトラブルが起きたとします。多くの人がまずやるのは、トラブルの現場で起きた細かい動きの確認と検証です。だれだれがこういう動きをして、結果こういうエラーが起きて、このポイントでミスが起きたという細かい検証をするわけですが、これは先ほどのサッカーに例えると、スローモーションで状況を分析的にみて、細部を把握する行動にとても似ているように思えます。結果、個々人の動きの細かいところから、小さな改善点が浮かび上がり、PDCAが回るわけです。

 この「細かい状況を解像度を上げて(スローモーション的な視点で)みる」というのは、日本の企業が比較的得意としているように見えます。メーカーさんが得意とする、細かく分析して改善改善を繰り返す手法ですね。

 一方で大事なのは、早回し的な目線で状況を見つめて、俯瞰して「トラブルに至る流れ」を眺めることだと考えています。結局のところ、目の前の細部だけを改善しても、それは部分最適で終わります。しかし、このトラブルが、長いスパンでみたときに、どんな起点からはじまり、どんな流れで、どんな経路をたどって、どこを経由しながら事象がおきた地点にたどり着いたかを観ることができれば、全体最適のためのヒントが得られるわけです。全体を眺めないと分からないことは本当にたくさんありますし、流れから見えたものを活かしていくことで、トラブルの本質をより立体的にとらえることができるのです。

 一般的傾向として日本の企業は真面目なので「早回し的な視点でざっくりと状況把握するプロセス」よりは「スローモーション的な視点でじっくりと細かいポイントを一つ一つ確認するプロセス」を好みます。結果、多くの施策が部分最適で終わりがちです。大事なのは「早回し的視点とスローモーション的な視点」を融合させることで、全体最適と部分最適をバランスよくなじませて、事象全体の解像度を上げていくことなのです。

 早回しでざっくりと状況を把握することが「冒涜」と無意識に思ってしまった自分にも、この「細かくみる至上主義」のバイアスが根強く残っていることに気づかされます。しかし、実際に体験してみると、どっちが良くて、どっちが悪いということもないのです。早回しの視点とスローモーションの視点にはそれぞれ一長一短あります。それを組合わせながら、色々な角度で世の中の事象を見つめることが大事なのではないでしょうか。


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