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リストラのニュースが目立つ中国。都市住みで24歳以下の5月失業率18%超えの実態

日本のニュースやTwitterを見ていると日本経済の成長の低さや不景気な話が多いですが、日本より成長している中国でも良い話より悪いニュースの方が多いように感じています。中国企業のリストラの話は以前にもしたことがあります。

先日一つの記事が注目されていたのですが、そのタイトルが「近1700家公司裁员逾90万人,这公司员工少了99.8%」。約1700社が90万人をリストラしたという過激なものでした。

4月末に、2021年のA株(A株は中国国内で上場され中国A株市場で取引されている株式のこと)の年次決算報告書の開示が完了したのですが、そこには上場企業のレイオフの状況も公開されていました。 A株の合計は4650社なのですがそのうち約1700社が合計90万人以上の従業員を解雇したことが明らかになったのです。

詳細は一番下にリンクを貼っておくので興味があったら見てください。度々話題になるIT業界や教育業界は想像つくと思いますが、それ以外にもさまざまな業界に及んでいます。食品や不動産など多額の損失を出している企業はもちろん人員削減を行っています。国有企業3社が1万人以上のレイオフを実施していることも話題となりました。

レイオフを積極的に行っている企業に注目すると、解雇率が50%を超えているのは43社もあります。 なかでも海航科技(かつてFORTUNE Global 500だった海南航空グループが未来に向かって設立したイノベーション会社)は99.82%の社員を解雇して総社員数は36,992人から66人に激減で、もはや会社成立してないんじゃないですかレベル。

ここまで過激ではないにせよ、70%以上を解雇した企業は11社もありました。

また、給料や福利厚生が良くて若者に人気のインターネット大手のレイオフも相変わらず頻繁にSNSのトレンドに上がっています。それは、日本でも崇められている中国のITジャイアント企業も例外ではありません。

2022年3月、テンセントのCSIG(クラウドとスマート事業グループ)が15%のレイオフ。5月22日にはテンセントの複数の事業グループが10%のレイオフを行いました。

アリババは4月、5月に“持続的な事業調整”が行われ大量の退職がありました。また、618キャンペーン(6月18日中心に行われたECサービスのセールイベント)で自己最高を更新したEC大手のJDも3月31日に退職の手続きを行うのに順番待ちが1000番以上になって、その日だけで少なくとも1000人以上が退職。この時の、クビではなくて「JDから卒業おめでとう」という言い方には、ネットでは批判の嵐でした。

また、BilibiliやZhihuなどの中堅IT企業でも次々と大規模の人員削減の情報が出ています。

ボクのnoteをいつもご覧になっている方だと、動画サイト大手のiQiyiが昨年に大規模レイオフをしたことは記憶があるかもしれません(上記に貼ったリンクのnoteでも言及しています)。興味深いことに、悲惨ともいえるレイオフを経て、iQiyiは2022年Q1の財務報告書では、それまでの12年連続の赤字から脱出し初めての黒字になりました。事業がよくなったのか、レイオフのおかげなのか非常に気になります。

それとは対照的に、レイオフの動きが遅かったBilibiliが、2022年Q1に22.84億元の赤字が出ています。これはレイオフだけで救われるのかな。

国家統計局が発表した数字によると、2022年5月、中国の都市部の失業率は5.9%で4月より0.2ポイント減なのですが。16~24歳の若者の失業率はなんと18.4%です。6月末から7月下旬には大学の卒業シーズンが来てまた1076万人の卒業生が労働市場に入るわけです。今の経済状況が続けば、就職難がまだまだ続くでしょう。

一方で従業員数が増加している企業ももちろんあり、資源やエネルギーなどの業界は好調で採用を増やしています。また、EV自動車の大手である比亚迪(BYD)は6.4万人も従業員数が増えていて、成長企業としての期待が高まりますね。

ただ体感的には好調はわずか一部の企業で、中国政府が「政府仕事報告」で言及した2022年のGDP成長率5.5%前後の実現は難しいように思います。

適切なレイオフの実施は企業にも従業員にも良い側面があると考えています。市場に流動性があることは大事です。ただ全体的に閉塞感があるのが最近の感覚です。中国では景気が良い話ばかりじゃないことをぜひ知っていただければと思います。こういった状況を今後も現地から伝えたいなと思います。

(参考資料)


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