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下振れリスクの高まりで悩み深まるECB

7月30日に発表されたユーロ圏のGDP速報値は0.3%増で、ECB予想0.4%増を下回った。大した違いはない、と思われるかもしれないが、特にドイツの回復の遅れが大きいことに目を向けると景気が予想以上に弱まるリスクは、実はこの時点で浮き彫りになっていた。

主要4か国のうち成長をけん引しているのはスペインである。前期比成長率は0.8%とコンセンサス予想の0.5%対比でも上振れている。フランスとイタリアの成長率も0.3%、0.2%と堅調。しかし、ドイツの回復は遅れており、緩やかな景気拡大を経て、第2四半期には再びマイナス成長。実際ドイツ経済は前期比0.1%縮小。

ドイツの連邦統計局によると、成長の主な押し下げ要因は投資や建設の急激な縮小である。年初の異例の暖冬により、第1四半期に建設が急回復していたことからの反動は予想通りの展開とはいえ、少々低下し過ぎており、これが製造業の景況感が冴えないこととリンクしているとすると、懸念が膨らむ。ドイツも含めサービス部門は堅調なため、全体の見通しを大きく揺るがしていないものの、記事指摘のように、賃上げが追い付かず消費不振が始まると、そもそも欧州景況感が意外にも堅調であったことの謎が完全に溶けてしまい、一気に冴えない展開が進みかねない。

ECB内のハト派が成長の下振れリスクを見過ごすことはないと思われる。そうだとすれば、既に目先の成長見通しをめぐり、下振れ方向での見直すことになるため、9月の利下げをさらに後押しすることになろう。極右勢力が強まる欧州において、最低賃金の引き上げなどがなされ、インフレ懸念が再び台頭する可能性があることを考えれば、過度な金利の引き下げは難しくなっていることもある。Fedに比べて悩みが少なかったはずのECBだが、スタグフレーション気味の状況を前に、悩みが深まっているはずである。

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