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沈静化する中、気になる“燻る火種”

総合インフレ率は6月の前年同月比7.9%から同6.8%へと大幅に低下した。この低下は主に家計の光熱費の大幅下落を反映したもの、である。これはコンセンサス通りであったが、コア財価格上昇率が2か月連続で低下した(6月の前年同月比6.4%から7月同5.9%へ)のはインフレが抑制されつつある動向を読みたい中央銀行BoEにとっては良い傾向と言える。

生産者物価上昇率の急低下をもたらしたサプライチェーンの緩和が、ようやく消費者物価上昇率にもあらわれ初めたことを示唆しているとすれば、確かにインフレが安定していくのかもしれない。

しかしながら、CPIの前日に発表された労働市場データにおける賃金データの力強さには注意が必要であろう。第2四半期の正規賃金の伸び率は前年同期比7.4%という予想に対し、0.4%ポイント高い7.8%、2001年の統計開始以来の高さとなったのである。総賃金の伸び率も同8.2%とコンセンサス予想対比0.8%ポイントも上振れた。

もっともこの賃金データの力強さには、国民保健サービスNHS職員への一時金支給を反映しており、持続的なインフレ圧力を示すものではないかもしれない。しかし、このところの賃金データは継続的に上方修正される傾向があること、賃金伸び率のモメンタムは急速に高まっていることから、一定程度のインフレ圧力にはつながるものであろう。

こうしたインフレ圧力に対する懸念がある以上、まだMPCにおいて利上げを模索せざるを得ない状況だということになる。そのため、9月の25bpの追加利上げはほぼ見ておくべきであろうということと考えられる。利上げペースをさらに加速させることになるかというところまでは、他国の状況を見る限り自信が持てない面もあるが、労働市場統計とインフレ統計を確認して利上げペースが加速する可能性は決してゼロではない。


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