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ファスト(仕事ができる人)を超えて、スロー(人生を楽しむ人)になる〜私の#仕事のポリシー

日経新聞と日経COMEMOが出してくださったお題、「#仕事のポリシー」についての記事です。私自身、4年前に二社目の起業を行い、その会社のコンセプトを「Slow Innovation」としました。ファストの価値観である、顧客の期待をQCD(品質・コスト・納期)で超えて、仕事ができる人になることよりも、スローの価値観である、物事の本質を考え、自分自身の当事者性・市民性を大切にした社会変革を起こしたいと思っての企業でした。4年近く経ってみて、改めて「自分の仕事のポリシー」を考えてみたいと思います。

ファストとスロー

ファストとスローの対比は、ファストフードの反対運動でもあった、健康・環境・地域にやさしいスローフードから始まります。今では、大量生産・大量廃棄を前提とするファストファッションに対して、循環型のスローファッションという概念も生まれています。

実はこの「ファストとスロー」は、会社経営、イノベーション、ライフスタイル、そしてリーダーシップにもあるのです。

ファストとは、「ゴールを決めて、そこに向かって最短距離で到達しようとする考え方」です。一方、スローとは「自分自身の心の声、周りの人の心の声に耳を傾け、結果よりもつながりの質やプロセスを大切にすることで、ファストでは達成できない長期的成果を得るアプローチ」になります。

対話の力

ファストなアプローチは、分析に基づき、合理的な計画と実施で成果をあげていきます。一方で、スローなアプローチを成功に導くのは、関係者との対話であり、関係性の構築になります。

次の記事は、注目の書籍を紹介しつつ、対話の力が人的資本経営にとても重要であることを伝えています。アダム・カヘン氏の新訳書では「自分のマインドや意思をオープンにして話し、人の話を聞くことがいかに重要か、しかしいかに繊細で難しいことか」という言葉を紹介しています。そして結論として、「人的資本経営をはじめパーパス経営やエンゲージメント向上、女性活躍推進。企業の間でバズワードとなっているこうした組織改革がうまくいくかどうかは、いずれも対話の質にかかわってくる」とまとめています。

対話の難しさというのは、実は、「対話の目的の誤解」にあるのではないでしょうか。たとえば「部下のモチベーションを高めるために対話する」といったように、本来聞き手であるはずの人が「目的をもって対話する」という構図自体が、相手の言葉を評価判断し、ときには誘導しする形になってしまい、結果的に良い対話にならない、ということが起きがちです。

スローリーダーシップを発揮する

そこで重要になってくるのが、スローリーダーシップだと思うのです。

ファストリーダーシップは、次の3つの原則が表すように「相手を動かす」ことを目的としたコミュニケーションです。

  • 原則1:次の地点を示す

  • 原則2:牽引する

  • 原則3:動かす

一方、スローリーダーシップは、次の3つの原則が示すように、「自分自身にも相手にも好奇心をもって関わる」ことが基軸にあります。その結果、自分自身についても発見があるでしょうし、相手についても発見があります。それらの発見が、「ともに変わる」という奇跡を生み出すことにつながります。しかし、ともに変わる先については、自分自身も予見を持たずに本質探究していくことが重要になります。

  • 原則1:旗を立てる(自らの心の声を聴き、信じるものの旗を立てる)

  • 原則2:聴ききる

  • 原則3:ともに変わる

ケースメソッド:ファストとスローの違いを味わう

次のケースを読んで、あなたの仕事のポリシーであれば、どのように対応すると思うか、考えてみてください。その上で、ファストな対策と、スローな対策を読んでみてください。あなたはファスト寄りか、スロー寄りか、考えるきっかけになればと思います。

ケース

上司があれやってこれやってと細かなタスクを振ってきます。顧客に行けと言われますが、どんな提案をするんだとチェックしたり、営業が終わると成果を確認してきて、助言をしようとします。かと思えば、自分が忙しくなると完全放置して、思い出したように、あれどうなったとマイクロマネジメントが始まります。

ファストな対策

PDCAを明確にして定期報告をします。上司の助言がどう役だったかの忖度も添えて。つねに上司の一歩先ゆく行動と報告で、つねに上司を満足させます。上司の助言がよければ、営業成績も上がります。

スローな対策

たんに問題解決をめざすだけでなく、「自分の心の声」を聴くことも同時に始めます。つまり関係改善するにとどまらず、その先の共創の関係への仕込みを始めておくわけです。そして、「上司の心の声」も聴ききります。表面的に話される助言のコンテンツではなく、その奥底の上司の想いや課題に共感しようとします。当然、顧客に対しても聴ききります。それらに向き合いながら、自分は上司と顧客のために何ができるのだろうかと本気で考え、行動します。

結果よりも対話の質そのものが幸せ

上のケースは、どちらが正解ということでもありませんし、スローな対策を打ったからと言って、それが必ずしも将来的な共創関係につながるとも限りません。

しかし、私自身が満足しているのは、スローな関わり方をしていくと、その人と深い関係になることができ、二人での飲みが盛り上がるんです。これは、私の人生にとっては、珠玉の時間になります。

付け加えておくと、さらにこういう関係になった人との間では、長期的に共創関係が続くことがとても多いのが事実です。相手を仕事のリソースだと考える(ファストな思考)のではなく、相手を仕事を通して知り合った親友だと考える(スローな思考)でいくと、仕事も人生も、もっと楽しくなるのではないでしょうか。

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