相似系か?似て非なるものか?

ドイツメルケル首相の後任たるCDU新党首にクランプカレンバウアー氏が選出された。マーケットから見れば予想通りの展開で、反応薄。

12月7日のCDU党大会では、CDU幹事長であったクランプカレンバウアー氏に加えて、連邦保健相のシュパーン氏、元党幹部で弁護士のメルツ氏が候補であった。最終的にはメルツ氏との一騎打ちとなり、結果52%の得票でクランプカレンバウアー氏が勝利。

しかし、懸念は尽きない。第一に、政権内の分断がないとはいえない程の僅差に終わり、却って保守派は勢いづく可能性が出てきた。第二に、ミニメルケルと言われてきたクランプカレンバウアー氏が果たしてどこまで独自色を出せるのか、が不明である。メルケル首相のバランス感覚に似ていることは、政治家として優秀であることを示すが、そもそも移民政策で失敗したメルケル首相に似ているイメージは現時点ではあまり嬉しいイメージではない。第三に、そんな中、援護射撃を期待したいフランスマクロン政権も自国内が定まっておらず、頼りにはできない。第四に、Brexitやイタリアの財政問題も先送りされ、難題が欧州に立ちはだかっている。そんな中、第五に、5月には欧州議会選挙を迎えれば、ポピュリズム政党がどの国でも虎視眈々と票集めをすること必至。

そもそも、ミニケルケルでは期待感も盛り上がらない。大人気の芸能人の兄弟が「似ていて美男、美女」だからスカウトされて芸能人になるケースがあるが、似ているだけでどこか違う例は多いもの。似ていても、何かが欠けているからか、やはり最初に出てきた芸能人のスター性には及ばないことが多い。クランプカレンバウアー氏本人が、「56歳で3人の子供がおり、ミニではない」と主張しているようだが、メルケル後継者として支持を集めたところもあるわけで、慌てて違うと言ったところで得策には見えない。メルケル首相の持つバランス力を踏襲した上で、どこまで独自色を出し、まずはCDU内の求心力となり得るか。懸念ある船出だが、2019年の欧州を判断するためにも、見届けたい。

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