メイ首相の苦境と欧州議会選挙

最近の英国におけるブレグジット関連の世論調査によると、英国の政党間の勢力均衡がこれまで以上に分断されており、与党の党首人事やブレグジットそのものの帰結に関する不透明感がさらに高まる可能性が示唆される。

英国の2大政党である保守党と労働党の支持率は緩慢に低下し続けてきたが、5月に入ってからの特徴として、特に労働党のそれがここへ来て大きく落ち込んでいる。ブレグジット問題に関する保守党内部の統一感の欠如からすれば保守党への支持低下は理解できるが、労働党のこの問題に対する対応についても国民が不満であることがわかる。一方で、ナイジェル・ファラージュが立ち上げた「ブレグジット党」への支持はそのメッセージの明快さから上昇が加速し、5月に入り労働党を抜いて政党間第一位の支持を獲得した。さらに、ブレグジット党ほどではないにせよ、EU残留派である「自由民主党」と「緑の党」への支持も上昇が顕著である。離脱あるいは残留を明確に志向する政党がその支持において隆盛である、ということがわかる。

これは2大政党に対する失望の裏腹である。欧州議会選挙でこうした傾向がさらに具体化する場合、保守党のメイ首相に対する退陣圧力はこれまで以上に高まるであろうことは明らかである。保守党内部では党首不信任を1年に1回に限る党則の変更可否がすでに議論されており、首相が6月末(EUが離脱協議の進展をチェックする期限)までに辞任に応じない場合、党則変更の正式な提案に向けて保守党幹部が迅速に動く可能性がある。それが実現するとして、新党首の選任には1-2か月を要すると見られ、10月末の新たな離脱期限を控えて不透明感が増すことになる。また、保守党でメイ首相が党首を辞任し、新たな党首を選任する場合には、離脱あるいは残留を明確に志向する政党が支持を集めていることを受け、保守党そのものが右傾化することも考えておく必要がある。

そうなれば、さらにブレグジットの議論がまとまり難くもなる。ポンドや英国資産の買戻しのタイミングは簡単に訪れない可能性が大きい。

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