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デジタル田園都市構想の鍵を握る、シニアのスマホ移行

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

通信業者にとって「最後のフロンティア」の獲得競争が本格化しています。情報通信機器の世帯保有率は9割を超え、2020年のインターネット利用率も83.4%となり国民的なインフラとして認知されています。最も利用率が高いスマートフォンによるインターネット利用率は68.3%となり、他の端末と比べてもその利用率の高さは群を抜いています(総務省「令和3年 情報通信白書」)。直感的な操作方法やいつでもどこでも利用できる利便性が、多くの方に受け入れられていると想像できます。

この68.3%をという数字を見て「え、意外と少ないのでは?」と思った方もいるかもしれません。私も8割くらいと思っていました。よくよく調べてみると、第3世代(3G)、いわゆるガラケーの利用者が最大で2000万人存在しているようです。

第3世代(3G)の携帯電話サービスの完全終了まであと4年。KDDIが今春終え、3Gの大半を占める「ガラケー」からスマートフォンへの買い替え需要が増すと携帯各社の期待が高まる。高速通信規格「5G」への移行が進むなか、3G利用者は最大2000万人。大半がシニア世代だ。頭打ちのスマホ市場の最後の伸びしろを巡る争奪戦が本格化している。

飽和したと言われているスマホ市場ですが、2000万人というのは非常に大きな伸びしろです。各社の携帯電話契約者数の総計が2億回線弱ですので、実にその10%程度を占めることになります。

いまでは規制もあり過剰な新規加入・のりかえキャンペーンは鳴りを潜めましたが、MNP(番号ポータビリティ)で動く加入者は毎年500万人程度と言われています。市場での伸びしろがないなかで新規加入を狙うのであればこの狭いターゲットでの獲得合戦になるわけです。よって、ときには「3万円キャッシュバック!」のようなキャンペーン競争になっていました。

これらの状況を鑑みても、以下にこの2000万人が貴重かがわかるでしょう。

また、政府が力を入れている「デジタル田園都市構想」を実現するためにも、誰一人取り残さない形ので国家のデジタル化は至上命題です。そのため、実現に向けた基本方針案には、デジタル機器の取り扱いが不慣れな高齢者らを支援する「デジタル推進委員」を増やすと明記されました。

タブレット端末やスマートフォンなどデジタル機器の取り扱いが不慣れな高齢者らを支援する「デジタル推進委員」を増やすと記した。基本方針案に2022年度中に2万人以上確保すると盛った。国が全国から希望者を募り認定する。

自治体の業務や住民手続きをデジタル化した自治体を24年度末までに1000に広げる計画も打ち出した。都心で勤務する人が転職せず地方へ移住しやすくなるように新たな目標を盛り込んだ。

この「デジタル推進委員」はどうやら完全な無償ボランティアらしく、どれほどの人が集まるのかは不透明ではあります。しかし、国をあげてデジタル化に取り組むという覚悟が見えることはポジティブだと感じています。

一方で、デジタル化はあくまでも手段であり、なんでもかんでもデジタルファーストで望むことは弊害を生むと考えています。世の中には「なぜこの紙が必要なのか?連携してくれれば1枚で済むのでは?」というような業務フローが多く見られます。これを見直すことなしに「紙をデジタル化しましょう!」となると、一層の混乱を招きます。徹底的な利用者目線から既存の仕組みを再考してシェイプアップすることから初めなくてはなりません。

また、高齢者がデジタルに弱いというのもひとつのバイアスでしょう。一昔前のパソコンブームのときに、町内会のチラシをつくりたいからパソコンを習いはじめ、いまではすっかり使いこなせるようになったという高齢者の方々はたくさんおられます。スマホではより直感的な操作が可能ですので、作り手側の努力によってカバーできることは多いでしょう。

また、せっかく世の中とよりつながるツールを手にしたのであれば、健康寿命を伸ばすための取り組みにも力を入れるべきです。台湾における高齢化社会のユニークな取り組みの数々は、日本にとっても参考になる点が多いと思います。

1. 役割を持つこと
2. 身体を動かすこと
3. 新しい力を身に付けること
4. 人とコミュニケーションをとること
この4つの積み重ねが心豊かなセカンドライフを育むこと、そして健康寿命を延ばすことにつながるという意識を強く持っているということがわかってきました。

テクノロジーの力で弱くなったものを補い、より豊かな社会をすべての世代で享受できる。そういった未来を指向していきたいと強く思います。


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タイトル画像提供:yacobchuk / PIXTA(ピクスタ)

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