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人間の生活・生存に直接つながるスキルの重要性が増すかもしれない近未来

「いまの時代はどんなスキルを必要としているのでしょうか。」というお題と紹介された記事をみて、少し考え込んでしまった。

例示されている、エンジン技師からEV部品開発者になるためのスキルの習得、といったことももちろん大切なことである。時代の変化に合わせて、自分のもつ「仕事のスキル」をアップデートしていくことは欠かせない。

自分自身も、そうした必要性は痛感するところで、まだ着手できていないのだが、独立して5年が経過していることを機に、改めて今後の仕事の内容とそこで必要とされる知識・スキルを精査し、これまでとは違う方向に進むことも考えている。

急激に変化する世界で、必要になるスキルとは


一方で、激しく変化する世界の中で、単に「仕事のスキル」のアップデートだけで足りるのだろうか、ということを最近はよく考えるようになっている。3年後にどのような社会になっているかということは、少し大げさに言えば想像を絶する世界でもある。今年に入って、世界が大きく変わり始めていることは強く感じている。

一つは、言ってみればコロナバブルとでも言ってよかったのだと思うが、各国政府がコロナ対策として大量のお金を補助金などの形で市中に供給した結果、この数年は大きく見れば経済的には好調に回ってきたのが、特に先進国での経済の状況と言って良いのだと思う。日本もさほど景気が良くなったという印象・感覚はないかもしれないが、日本企業の好決算が続いたという点を捉えれば、日本またそうした国の一つであったと言えるだろう。

ところが今年に入って、アメリカの株式市場が下落基調に転じたことを受け、日本含めた世界の株式市場が振るわなくなってきている。これに加えてアメリカではインフレが進み、それを抑えるために金利の引き上げが段階的とはいえ急激に進んでおり、これによって円安圧力が強くなったり、企業の資金調達が難しくなったりするなど、経済面で大きな変化が起きている。

加えて、ロシアによるウクライナへの侵略戦争が大きな影を政治・経済両面で落としている。ロシアからの石油や天然ガスなどに頼ってきた世界、とりわけヨーロッパではエネルギーの問題が改めてクローズアップされた。日本においても原発が止まっていて火力に頼らざるを得ない電力供給のなか、原油の値上がりと円安のダブルパンチで電気料金が上昇し、電力が逼迫する状況が起きている。夏もそうだが、冬の電力逼迫は暖を取れないことで人間の生命維持に直接の影響を与えかねない。

そして、もしロシアの侵略が成功し、それが既成事実化するなら、軍事力の強い国家が弱い国家に何をしてもいい、という前例となることが懸念される。そうなれば、日本も安全保障の上で危うい立場に置かれることになる。

心配すればきりがないが、こうした状況を考えると、「仕事のスキル」のリスキリングも非常に大切ではあるのだが、一方で根源的な生きていくための力、それをスキルと呼んでよいかどうかは分からないが、「生活のスキル」「生存のスキル」を強化しリスキリングしていく必要性を、個人的には改めて感じている。

具体的には、1つは「お金のスキル」、そしてもう1つは「(文字通り)食べて行くためのスキル」が、今後重要性を増していくのではないかと思っている。

「お金のスキル」

1つ目の「お金のスキル」に関して言えば、簡単に言えばマネーリテラシーを高めるということ。日本は少子高齢化で、国の財政も必ずしも見通しが明るくはなく、その中で増え続ける高齢者がどのように年金を受け取っていけるのかということは、年金を負担することになる現役世代を含め、多くの人にとって関心事になっている。

しかし一方で、日本はお金を預貯金に置いておくだけで、投資にお金が向かわないことでは世界の他国と比較しても突出しているものがある。その原因のひとつが、これまた世界の比較の中では低いことが調査でも明らかになっているマネーリテラシーにあるのだとすれば、この先3年で身につけていくべきスキルの一つと言うべきではないだろうか。

世の中がどのように変わり、岸田政権の言う「新しい資本主義」というものが生まれたとしても、お金を通じた価値交換が私たちが生きていく上でのベースになることは、おそらくこの先3年10年というレベル、あるいは100年というレベルにおいても変わらないだろう。もちろん、それはキャッシュレスという形で、目に見える通貨ではなくなるかもしれないが、キャッシュレスであってもマネーがなくなるわけではない。リスキリングで得た稼ぎであるマネーをいかに守るか、そしてインフレが進むなかでも目減りさせずに置いておけるかということは、生き残っていく上での基礎的なスキルであり、今後インフレが続くのであるとすれば、その重要性は非常に高いものになっていく。

今年から、金融教育が高校の教育カリキュラムに取り入れられたが、60歳以下の高卒の人が全員この教育を受け、金融関係の一定のリテラシーを持つまでには、学校の教育だけに頼っていれば40年かかるということだ。ということは、既に高校を卒業してしまった人たちは自力でこうしたマネーリテラシーを身につけていかなければ、自分の生活を守ることが難しくなるということだ、と言ってもいいかもしれない。

こうしたことを考えると、経済の先行きが不透明な中、マネーリテラシー、マネーに関するスキルはこの先3年で非常に重要なスキルとなると思うし、またインフレにならなかったとしても、マネーのリテラシー・スキルが上がることによって、経済全体に関する理解が深まることになる。むしろ、その方が重要なことだろう。これは陳腐化しにくいスキルであり、自分の働いている職種や業界にかかわらず、普遍的な身につけて損のないスキルではないかと思う。

文字通り、食料を得る「食べていくスキル」

そしてそれをさらに推し進めるなら、まさに文字通り「食べていくスキル」、つまりは食べる物を作ったり取ったりするスキルが、改めて必要になるのかもしれない、と考えている。これは3年という短いスパンではないのかもしれないけれども、考えたくはないが仮に日本が戦争に巻き込まれる、ということになった時には、重要性が増すことになるのだろう。万が一、そうした状況になったときに、私たちはどのようにして生き延びていくことができるのか。それを考えると、デジタルスキルもあるに越したことはないが、それだけでは、文字通り「食べていく」ことは難しいかもしれない。

日本は人口が減り、耕作放棄地など農業ができる土地でありながら使われていない土地が増えている現状を考えると、私たちは改めて自分自身が食べていく物を作る・取るというスキルが必要になるのかもしれない。

生存に直結するスキルが重要になるかもしれない

お金にしても食物の生産・獲得にしても生きていくことにより近いスキルであり、個別の仕事とか業界や業種、あるいは社会のデジタル化といったこととは必ずしも関係がない、と見えるかもしれない。

しかし今、大きく世の中が動き始め、グローバリズムの終わりが言われるようになってきた。これは言葉を変えれば国際分業の衰退であり、地産地消や自給自足の復活とも捉えられる。場合によっては、後世において歴史の転換点になったと考えられるような状況が今起きていると考えるのであれば、一度原点に立ち返って、私たちが生きていくために必要な、根源的なスキルについても考えることが、時には必要なのかもしれない。



#日経COMEMO #3年後に必要なスキル

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