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ラガルド総裁は、中央銀行の政策を議論するECB主催の会合で講演した際、同行の6月のスタッフ予想に示された経済やインフレに関する見解を強く支持したと見られる。その見解は、生産性と賃金(合わせると単位労働コスト)といった、インフレを緩やかに左右する要因を大いに強調しているもので、これらを政策に落とし込むなら、巷間言われている通り、「利上げ継続」と言う結果になる。

同総裁は、7月の利上げ方針を確認することで、それを裏付けた。7月以降の政策措置の予告は控えたとはいえ、講演では相当な決意を示したことは重要なポイントだ。ECBは金利を適切な水準に引き上げることで、需要を十分抑制する必要があると述べ、「迷っている場合ではなく、まだ勝利宣言はできない」と結論付けている。当面は、ラガルド総裁が6月のスタッフ予想の根底にあるテーマを是認し、当月の会合のメッセージを一切トーンダウンしなかったことから、ECBが夏季休暇後、4.00%の最終水準に向け金利を再び引き上げる可能性が大きいと見てよいのではないか。

一方、同総裁が昨今の景気データの失速を余り考慮していないことには注意をしておくべきである。労働市況が堅調な中で生産が落ち込んでいても、それは一時的な生産性の低下を意味するに過ぎないと見るなど景況感の悪化傾向が続く、ということではなさそうである。ただし、米国経済がこの先煮詰まることも含め、エネルギー問題を抱えるドイツ、政治問題が複雑化しているフランスなどを鑑みると、欧州の経済成長はいずれトレンドを大きく下回ることになるのではないか。9月にも利上げを中断するなど、景気失速がそのきっかけになりうることは踏まえておくべきである。

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