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ひっ迫して見える英労働市場 「供給ショック」は循環的か構造的か

12月単月ベースの失業率は3.9%に低下し、過去2年間で最低水準にある。求人・失業者比率や不完全就業率など、どの指標をとっても、英国労働市場のひっ迫を示している。同時に賃金上昇率も強い。週当たり賃金の伸びが最近ピーク時から減速しているとはいえ、パンデミック前のトレンドを上回っている。こうしたデータは、BOEによる金融政策委員会MPCがいち早く引き締めモードに突入したことを正当化するだけでなく、3月の再利上げという見方をサポートするものである。

しかし、労働市場のひっ迫は全面的な強さを示すわけではないことに注意が必要だ。第一に、インフレ率の上昇が賃金上昇ペースを上回っており、実質ベースで見た賃金は低下していること、がある。第二に、就業者数の水準がパンデミック前を大きく下回っていること、すなわち労働力の「供給ショック」である。パンデミックに関連した失業者数の増加は既に解消されていることを考えると、失業の回復は表面的に見える程良好ではない可能性が大きい。現在の就業者数の水準とパンデミック前のトレンドとの乖離から測定した「消えた」労働者は120万人前後になる、とも見られる程で、就業者数が不足している上に労働力需要が強いため、求人件数が記録的高水準となって労働市場がひっ迫して見える、というわけだ。

続いて、こうした「供給ショック」が循環的か構造的か、という問題について見極める必要が出て来る。構造的に労働市場がひっ迫するのであれば、金融引き締め的な政策をさらに強めなければならないからだ。雇用データは将来の楽観的動向をうかがわせているものの、この雇用データは過去大幅に下方修正されていることが多く、割り引いて見ておくことが必要だ。さらに、労働力データを見ると、比較的年齢層の高い労働者の不就労率が大幅に上昇していること、不就労の主な理由が長期的疾病となっている場合が増加していること、などが指摘できることは懸念材料である。以上より「供給ショック」は構造的な要素である可能性が大きいのではないか。また、英国の雇用市場においてはブレグジットの影響が残っていることもある。パンデミック発生以来、英国以外のEU出身労働者の就業水準の低下率は英国出身労働者に比べて大きくなっていることも確認されている。この点も構造的な「供給ショック」説を強めることになる。

英国の労働市場がひっ迫しているのは確かだ。これは強めの回復過程にあるとの印象にもつながる。だが、短期的には景気回復にとって逆風になりやすいこと、上記で述べたように労働市場のひっ迫は全面的な強さを示しているわけではないこと、など気を付けたい点が実は多いことに注意もしておきたい。


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