原油価格の今年9月にかけての上昇は、イランの供給停止見通しとベネズエラの生産量減少が、恒常的なリビアとナイジェリアの生産停滞と相まって、需給のタイト化観測を増大させたため、であった。しかし、その後、10月初め以降は下落つづき。株価下落を契機としたリスク資産のポジション圧縮に影響された部分が大きい。

さらに、だ。11月5日に米国がイラン向け制裁を再開してイラン産原油の輸入を禁じた際に、8カ国(インド、中国、日本、韓国など)に対して、(段階的な輸入量の縮小を条件に)180日間の例外措置を認めた。米国はこれら8カ国に、イランからの輸入を減らして他の産油国からの輸入に切り替えるための時間を与えた格好だ。これにより需給タイト化を見込んでいたポジションに損切りが加速化して、急落が始まった。

イランの原油輸出量は11月に入り激減した。180日間の猶予期間が延長される可能性は、トランプ政権下では低いと見ざるを得ず、原油供給がタイト化に向かうのは避けられないだろう。輸出量の低下はイランだけではなく、ベネズエラの産油量も減少の一途を辿っている。

次のOPEC会合は12月6日。現行の生産協定は年末に終了する。加盟国およびロシアは、減産に言及こそしていないが、需給の均衡が望ましいという発言が聞かれる。日量100万バレルの減産となる場合、6月の増産を相殺するのみとなるので、需給を均衡させるのが目的ならそれ以上の減産が必要となろう。だが、UAEやイラクな生産能力増強を目指しており減産には乗り気でないし、ロシアでも政府が減産を目論んでも石油企業がそれに従うとは限らない。ただし、政治的に一部の国に一定の増産を認めるような、全体としては小幅減産という決定になる可能性は十分にある。

一方で、米国のシェールオイルの輸出量増加は、極めて緩慢に進行中。米国EIAの推計では、米国の産油量は2018年に平均日量1090万バレル(前年比では150万バレル増加)となり、2019年には同1210万バレルに同程度増加する見込みだ。そうなると、2019年前半には、米国の石油在庫の積み上がりにより世界全体の産油量は余剰が拡大するのではないか。もっとも、油田からメキシコ湾岸までの輸送パイプラインの敷設に時間を要することを考えると、米国の石油輸出が拡大するのは2019年第3四半期以降になる。

上記の見通しからすると、まず向こう数カ月間は需給タイト化から原油価格は持ち直す。しかし、2019年後半には①米国の輸出量拡大、②世界的な成長減速を受けたエネルギー需要の減少を受けて、原油価格は下落に転じる公算が大きくなるということになるのではないか。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38019630R21C18A1I00000/

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