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英国予算:難題は先送り

ハント財務相が発表した予算にサプライズはなかった。大部分については、メディアで伝えられていた通りで、秋季声明と比べ財政が若干拡大されるといった程度。

選挙が近いこともあり、限定的だがばらまき財政の様相である。臨時的な財政収入をすべて支出に回し、労働党との差を詰めるために、国民保険料NICを2025年度から2%引き下げると発表した他、燃料税の引き上げを26年度まで1年間先送りした。その代わり、目立たないように増税策も混ぜてある。26年度から非定住者の税制上の扱いを変更、たばこ、航空券の税率を引き上げ、エネルギー生産者に対する超過利益税を延長など。

こうした政策パッケージでは、BOEの判断に何等かの影響を与えるものではない。NICの引き下げは労働供給の促進につながるため、典型的なフィリップス曲線を踏まえるとインフレ率を最大10bp押し上げると予想される。ただし、インフレに対する需要の限定的な影響はある程度、燃料税の引き上げ延期により相殺される。そのため、BOEの判断が大きく変わらない、ということになる。

成長促進を目的に減税を実施するというのが予算にまつわる論理だが、全体的な財政環境が引き続き成長の足かせとなっている事実に変わりはない。今回の発表が、然程大げさなパッケージではないにも関わらず、税負担は今後も拡大し、支出を縮小して、財政再建をしなければならないことはわかっている。中期的な財政計画を巡る不透明性が、選挙があることでより不確定なものになっていることもある。縮小均衡が模索される中、公共サービスの提供をいかに担保するかに不安も漂う。

慎重な方策を選んだことから、基本予想である秋の選挙の公算はさらに強まったと言える。統一地方選が既に予定されている5月2日に総選挙を実施するには、3月28日までに公示される必要がある。予算に関し比較的慎重なアプローチをとったことは、政府が選挙の公示に備えているシグナルとは受け取り難い。そうなると選挙は11月。同様のタイミングで実施される米国大統領選挙とあわせて、第4四半期にはリスクが高まることを想定し始める必要もありそうだ。

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