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米国制裁によるロシア市場への影響

ジョーバイデン米国大統領は、自身の人気を確固たるものとし、中間選挙にまで持ち込みたいと考えているからか、巨額にのぼるBuild Back Better計画(いわゆるBBB計画)を構築する一方、友好国の囲い込みとそうでない国への制裁強化も実施しているなど動きが矢継ぎ早に見える。

そのうち対ロシア政策は以下のとおり。4月15日にロシアに対し、大統領選挙への介入やサイバー攻撃などを理由として、制裁を強化する旨を発表。金融市場に直接かかるところとしては、米国財務省が米国金融機関に対し、6月14日以降、ロシア中銀やロシア財務省が発行した債券をプライマリーマーケットで取引することの禁止や、それら機関への融資の禁止である。

これらは、ロシアの市場動向には本格的な変化をもたらすことにはなるまい、と考えている。ロシアのマクロ経済基盤は盤石で、準備金はGDPの37%程度、銀行セクターのシステミック・リスクは概ね解消しており、穀物・燃料価格の上昇により対外収支も改善している他、外国人の国債保有比率は大幅に低下しているから、である。

しかし、国内政策の変化、金融引き締めへの転換につながる可能性はあるなど、「守り」モードに立ち戻る可能性は考えておく必要がある。インフレ率の上昇を背景に、もとより、金利の正常化への緩やかな道のりは想定内だが、地政学的な不透明感を加えると中銀の利上げが思うより前倒しになることはあろうからだ。

ロシア国債に対する今般の制裁は、流通市場も含める最終手段を行使しなかった点も大きい。ホワイトハウスが対ロシア関係で「安定性」と「確実性」を望んでいることを踏まえると理解できる。しかし、これからのイベント次第では、追加制裁ということもないわけではなく注視していきたい。5月4日のEU外相理事会、5月半ばのNATO国防相会議、9月19日の議会選挙など要注意イベントが続く。


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