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多くの企業で、なぜ中長期戦略が実行されなくなってしまったのか?考えてみた

こんにちは。リデザインワークの林です。

リデザインワーク社では、大手企業の経営コンサルティングや人事コンサルティングに携わらせていただいています。

コンサルティングを推進する中で、僕たちが一番大事にしているのは、実行です。どんなにすばらしい絵を描いても、実行されないと意味がありません。そのため、いかに実行できる理想を描くのか実行のための計画をいかに策定するかが大切だと思っています。

我々がお手伝いさせていただく多くの企業で、中長期ビジョンや中期経営計画が描かれています。しかし、以前は進んでいた中期経営戦略や計画が実行しきれていない会社が増えているように感じています。

その理由について様々な原因があると思いますが、3つに集約して考えてみました。

1.オーナーシップ不在
2.戦略として何かを捨てる意思決定ができない
3.挑戦や変化に抵抗的な文化とマネジメント

1.オーナーシップ不在

中期経営計画策定のプロセスや意思決定が問題だと思っています。策定の事務局であることが多い経営企画が、各事業トップと方針や計画数字を確認・議論して取りまとめていく進め方が一般的です。

その結果まとまった全体の数字を経営ボードが睨みながら、もっと数字が行けるのではないか?と、KPIの議論もそこそこに、各部門に計画を上方修正してほしいと差し戻しとなり、各事業トップがもう少し売上や利益の目標を高めて再提出して、取りまとめていく。
だったら最初から数字目標を伝えてほしいという気持ちと共に、蓋然性の一段下がった数字をアップデートしていく。

問題は、策定プロセスの特徴から、結局各部門の既存事業の延長上の計画にとどまるとともに、現場も自分たちの意思で作った目標だと言い切れない中で、コミット感が弱まっていることです。

結果、その構造の中で、全社の業績や成果に対してコミットする経営ボードになり切れていないことと、不足する数字部分の埋め合わせは各部門任せとなり、全社のリソース配分議論や投資優先順位議論が適切に行われないことです。

そして、中長期テーマやアジェンダについては、事務局としての経営企画が一定の範囲でモニタリングはしますが、進捗課題や遅延に対して、全体のリソース配分を変えてでもどのように実行するか?という真剣な議論が行われずに、淡々と報告会議が実施されていきます。

悪く言えば、中長期戦略や計画を策定するというルーティンが粛々と実施されており、各社の部長レイヤーになると、「あぁ、中長期戦略ですね。まぁあると言えばありますが・・・」という回答を多くの会社で耳にします。

もはや、中長期戦略や計画は策定するけど、そのために逆算してこだわって必ず達成するというオーナーシップを会社全体で誰ももっていない状況が最大の問題だと思います。

2.戦略として何かを捨てる意思決定ができない

1.の問題とも紐づきますが、以前は国内では、人口もマーケットも拡大をしていたので、少しストレッチな目標を掲げても、大きなポートフォリオの入れ替えや、戦略の組み換えが無くても、現場の改善の延長や、シェア拡大などの取り組みによって中長期戦略・計画を推進でき、一定の成果が上がっていました。

しかし、国内は人口減少期に入り、多くのマーケットは縮小に向かっています。そのため、中長期戦略は、現場の延長線の議論や計画の積み上げや、現場のモチベーションを高め、頑張ろう!というやり方では実現できなくなってきました。

そこで、最近多く見かけるのは、新規事業の確立や、新領域の開拓、海外展開などの新たな方針や軸を立てて中長期戦略が描かれるケースです。

そのこと自体はごく自然な流れなのですが、そこに投資や注力するために、非注力の事業やテーマをどうするのか?全体の投資の優先順位をどのように変えるのか?が議論されず、決め切られず、余力のリソース×自前主義的な展開で新しい領域に取り組むのですが、結局大きなうねりは起こせず未達成に終わってしまいます。

本気で取り組むなら、自社の中の優秀な人材をしっかりと新領域に異動させ、外部人材を要職に登用していく必要があります。
これを決めないなら新規事業や領域は雰囲気で終わるので、リソースを張らないのであればやらない。と決めることが大事だと思います。

また直近では、足りない利益成長をするために、売上成長して利益を出すのではなく、コストを削り、次に向けたR&Dや顧客提供価値の遊び部分を削って利益を出すケースも良く見られます。

これでは縮小均衡になってしまい、次の未来を自ら閉じてしまっている状況を作り出している企業が増えているという危機感があります。

3.挑戦や変化に抵抗的な文化とマネジメント

これからの時代は、変化対応スピードが求められる中で、既存プロセスの改善だけでなく、大きな変化や挑戦をしていく必要があります。

しかし、どこの会社でも、現在の役員の多くの方々は、マーケット拡大期にしっかりと既存事業での磨きこみと改善で成果を上げてこられた方々です。そして、そこで働く多くの従業員の皆さんもそうです。

新しいことをして多少成果を上げるくらいなら、既存事業を磨きこんで売上・利益を上げる方が評価された時代が長く続きました。実際、その方が事業成長に貢献できました。

よって、新しいことに取り組む、大きな変化を起こしていくことに慣れていない、抵抗的な文化や組織風土、マネジメントになっています。

磨きこみが重要なフェーズから、変化のフェーズに移ったので、文化とマネジメントをアップデートしていかないといけません

ここを変えていくのは経営ボード、事業トップの最重要の仕事であり、人事も含めて一緒に変えていく必要があります。

どういう行動が評価され、どのような行動は抑えていかないといけないのか。これを再度定義し、マネジメントが日々会話し、評価や仕組みと連動させていく。
そして、この変革には、繰り返し繰り返し上位レイヤーから実践・発信し続けていく必要があります。

利益を優先する中で、仕事の意義や価値を見失っていないか

短期の利益を上げることの優先順位が高まり、大きな成長が見込めない中では、前述のように、コストを削減し、仕事の良い意味での遊び部分を削ることが頻繁に行われるようになっています。

上司やメンバー間での会話が利益・利益になってしまい、市場に、顧客にどんな価値を届けたいのか?顧客価値を高めるために何に挑戦するのか?という問いが減ってきてしまっているのではないかと思います。

日本ではもともと重視されてきた、先義後利、三方よしという思想や考え方を再度重視し、自分たちの会社が提供できる価値や意義を深く議論するとともに、何にフォーカスするのかを議論し、絞ったうえで、挑戦できる組織、変化できる組織をどう作っていくか。

これが求められているのではないかと思います。

このこと全体に経営ボードがオーナーシップを持ち、挑戦していく日本企業が増えていくことを切に願いますし、少しでもサポートできるように頑張りたいと思います。

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経営戦略、人事戦略、働き方について、自身の経験を通じて得た気づきや学びを書いていきます。フォローしてもらえると喜びます! リクルートにて営業→経営企画室長→広報ブランド推進室長→働き方変革推進室長→リデザインワークを創業+ベーシック取締役COO+情報イノベーション大学客員教授