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課題の抽出まではできても結局バラマキしかできない人たち

課題の抽出は自民党も立憲民主党も間違っていない。

自民党「「統計上、婚姻カップルの出生率は数十年で大きく変わらない。非正規・正規社員の格差是正や賃上げの実現で経済不安を取り除き、婚姻数の上昇をはかれるかがカギだ」

立民党「未婚率の上昇が一因だろう。国立社会保障・人口問題研究所の調査で50歳時の未婚率は2020年に男性がおよそ28%、女性が18%で、それぞれ1970年の2%、3%から増えた。カップルに生まれる子どもの数の平均は40年ほど前から大きく減っていない。未婚率上昇の背景に不安定な雇用がある」

結婚した夫婦の子どもが減っているのではなく、結婚した夫婦の数が減っているから少子化なのだ(少子化ではなく少母化)という話は、もうかれこれ5年前から言い続けてきて、やっと課題の認識が一致したと感じる。同時に世間の認知も少し広まっている。

それはいいのだが、せっかく「課題の抽出」が与野党で一致していても、対策となると、結局的外れな対策しかしないからどうにもならない。

野党がなんとかのひとつ覚えみたいにバラマキしか言わないから、与党もバラマキをして野党案潰しする。元々、バラマキを主張していたから野党がバラマキを否定できないので、給付対象の拡大と金額の拡大を言うだけになる。野党案潰しするには、さらにバラマキすればいいっていう話に…という延々の繰り返しのバラマキインフレになっている。国民のためでも、少子化対策のためでもなく、選挙に負けないために。

結局、バラまけば回収されるんですよ。必ず増税や社会保障負担の増額で自分たちに返ってくる。つまり、バラまかれてもみんな1円の得にもならないどころか、長いライフサイクル単位で見ればみんな損をする。一番損をするのは誰かといえば、これから現役世代となって社会を支える今の子どもたち。

要するに「バラまけ」って言ってるのは本質的には子どもたちの敵なんですよ。ツイッターとかで飽きもせず「一律給付金出せ」とか言ってる界隈とか本当にヤバい。あれで一番喜んでいるのは「しめしめ、これで増税実行できる」という財務省だと思うよ。

雇用不安や経済不安という課題認識なのに、なんで「バラマキ」しか対策がないのかと思う。あげくの果てに今日のニュースではこれ。

少子化対策について3つの基本理念を提示した。「第1に若い世代の所得を増やすこと、第2に社会全体の構造や意識を変えること、第3に全ての子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援すること。この3つだ」と説明した。

1の「若い世代の所得を増やす」。これは最優先なのは言うまでもないし、むしろ少子化対策はこれに尽きるわけだが、具体的にどうすんのか?っていう話は「賃上げ」として書いてなくて、それだけじゃねえだろと言いたくもなる。若い世代の所得を増やすとかいいながら、子育て世帯に対する経済的支援とは書いていても、その子育て世帯になるための若い独身に対する支援は一向にしない。そうじゃないんですよ。3の「子育て世帯を支援」は、否定しないけど、それは出生増にはなりません。

2の育休云々の話など、それによって利益を享受できるのは所詮3割の大企業就業者のみ。伊藤忠の出生率が1.9だからって、日本全国すべての就業者の待遇を伊藤忠と同じにできるわけがない。いや、できるんだったらやってもらおうじゃない。伊藤忠の平均年収は1628万です(2021年)。日本全体の個人平均給料を1628万円にできるんですか?って話です。倍増どころじゃない4倍増です。

ともかく最重要課題は、苦しんでいる若者に目を向けろって話。

現在、20代の若者の可処分所得の中央値は272万円。300万円にすら達していない、しかも1996年からまったく増えていない。別に1600万円にしろとはいわないが、せめて中央値が300万円になるくらいの経済対策をするべきでしょう。なぜなら、結婚には「年収300万円の壁」があるからだ。

あと28万円でいい。月にしたら2.3万円。可処分所得なので、毎月2.3万円の税金や社会負担が減るだけで達成できる目標。または、計算上、今の200-300万円の人たちの構成比が1割下がって、それが300万以上にそのままあがれば達成できる目標。そんなに途方もない大変な事ですかね?

3割の大企業就業の若者や自らの力で金を稼げる若者をどんなに優遇しても変わらない。だって大企業の20代はとっくに300万円超えているんだから。見るべきは越えていない5割の人たちです。

中央値を300万円にするためには今200万円台以下の若者のうち10%引き上げればいいと申し上げたが、この10%がもし「金の問題で結婚できない」のであれば、20代の婚姻数が最大1割増えることになる。ちなみに、男の34歳までの結婚したいのにできない不本意未婚は59%いるが、そのうち24%が金の問題だと言っている。全体にすれば14%になる。もちろん、結婚できないのは金だけの問題じゃないが、その14%の比率を下げることは無意味ではない。

1割ってバカにするけど、20代の未婚男は560万人いる。うち1割が10年以内に初婚純増したとすれば1年あたり5.6万組の婚姻増になる。年間5.6万組婚姻が増えれば、発生結婚出生数に基づけば1婚姻あたり1.56人出生されるので、8.7万人の出生増。現在80万人の出生に対して、1割以上の出生増になる計算である。年間総合計で約88万人の出生。これが今の日本の限界だと思うが、これを実現できただけでずいぶんと違うのだ。ちなみに2022年出生数は77万人くらいの確定予測です。もし88万人産まれれば、14%増の大躍進。

育休とれる人の手取り10割保証も否定しないけど、言っちゃなんだが、それで一体純増がどんだけ見込めるっていうのさ。それ以前に金がねえから結婚もできねえっていう若者たった1割を救った方がよっぽど出生数は増える計算だ。

ちなみに、救えっといってもその若者に金を配るってことじゃない。全体的に底上げをしろっていう話である。特に、300万に達しない若者こそエッセンシャルワーカーだったりするのだ。

タワマンに住んで、エアコンのきいた部屋でデリバリー頼んでいられるような裕福層にバラまくより、そこに配達する側の若者の収入をなんとかしろっという話。保育や介護の仕事に従事する若者や物流現場で荷物を運ぶ若者を透明化するなよって話。


それとも、大企業に勤めて、結婚もタワマンも手に入れられた裕福な層にバラまいて、金のある夫婦だけに5人以上子どもを産ませればいいって魂胆なんですかね?それはそれで、バラまかれた裕福層も「産む機械」扱いで、ずいぶんと大変なことだと思う。まあ、裕福層もばらまかれたくらいでもう一人産もうとはしない。むしろ今いる子にもっとお金をかけようとするだけで出生増にはならない。それは韓国で実証済み。


ただの机上の空論じゃないかという指摘もあるだろうが、言わせてもらえば政府の今までの少子化対策の方がもっと空論だった。今まで何十年間も無意味なバラマキして効果あったの?一向に出生数が増えるどころか減り続けている結果を見れば、試す価値はあるだろう、と。

でも、政治家はやんないんだよ。選挙対策にバラマキが有効だから、今の子どもたちが50年後どんな大きな負担に苦しむのかなんてどうでもいいんだろ。1-2年後の自分の選挙のことしか考えていないから。


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