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音声経由でオンライン受発注するボイスコマースの購買特性

新型コロナウイルスの世界的な拡大は、小売業やサービス業の店舗に深刻な影響を与えているが、今後はリアル店舗の接客サービスも「対面型」から「非対面型」への移行が進むとみられている。

海外では数年前から、小売店舗やサービス業の中でも、AIによるチャットボットが実験的に導入されはじめている。スターバックスでは、2017年10月から「Starbucks Barista」というモバイルアプリをリリースして、ユーザーがスマートフォンから音声で商品の予約注文ができるようにしている。

チャットボットに呼びかけると、店員がオーダーを聞くのと同様に、ボットが写真付きメニューの表示や、個数・サイズの確認、料金の決済までを行い、最寄りの店舗に行けば、待ち時間無しで商品を受け取ることができる。

米スターバックスでは、それまでにも「Mobile Order & Pay」というモバイル決済システムで予約注文を受け付けていたが、チャットボットとの音声会話により、ブレンドの調整やミルク、シロップの追加などにも対応した口頭での完全オーダーを実現させようとしている。

スターバックスが開発するモバイルアプリのように、AIエージェントとの音声会話からオンライン注文へと誘導する方法は「ボイスコマース」と呼ばれている。

現状では、音声経由の注文はeコマース市場全体の1%未満と小さいが、英国の調査会社「Juniper Research」によると、2023年までには、世界で80億台もの音声アシスタントデバイスが普及する。音声アシスタントを搭載したデバイスは、モバイルアプリやスマートスピーカーの他にも、自動車や冷蔵庫、トイレなどの住宅設備までに及び、音声経由のeコマースは800億ドルの規模になることが予測されている。

ボイスコマースの購買特性としては、大きく2つのパターンが把握されている。 1つは、キッチンで料理をしている時に、いつも愛用している消耗品(調味料など)が切れていることに気づき、リピート注文するようなケース。デリバリーやテイクアウト型のレストランで、いつもと同じメニューを注文するのも、このパターンに該当する。音声エージェントに「いつものやつをお願い」とオーダーすれば、「○○の商品ですね」と確認画面が表示されて、「OK」と返答すれば注文が確定する。

そして2つ目は、音声エージェントとの会話により、購入すべき商品を探していくスタイルである。従来のオンラインショッピングは、消費者が購入する商品のキーワードを決めて検索する方式だが、音声エージェントとの会話では、わからないことを質問しながら、最適な商品を絞り込んでいく。つまり、購入対象が曖昧なところからスタートするため、ボイスコマースは「What」「How」「When」「Where」などの項目に対応したコンテンツとの相性が良くなる。

現状では、ネット上のトラフィックは、ほとんどがテキスト検索によって誘導されているが、今後は音声エージェントを介した、音声検索のシェアが次第に高まっていくことが予測されている。

世界的なコンサルティング会社のPwCが2018年に発表したレポート「Prepare for the voice revolution(音声革命への備え)」によると、現状の音声認識技術は、まだ開発初期の段階にあるが、調査対象とした米国ネットユーザー(1000人)の9割が、何らかの形で音声エージェントを使い始めている。さらに、音声エージェントを使い慣れると、毎日利用するヘビーユーザーとして定着する傾向がみられる。

スマートフォンが若者層から普及したのとは異なり、音声エージェントの特徴は、子ども・主婦・高齢者など、多様な層で活用されはじめている。世帯年収が10万ドルを超す、高所得世帯での利用率も高いが、これは、IoTセンサーと音声デバイスが組み込まれたスマート住宅の普及とも関係している。

「Amazon Echo」や「Google Home」のようなスマートスピーカー、さらに自動車に搭載されはじめているAIエージェントも、音声操作によりネットの情報にアクセスするため、今後はテキスト検索だけでなく、音声検索を意識したWebサイトの対策をしていく必要がありそうだ。音声検索にコンテンツを最適化することはVoice Search Optimization(VSO)と呼ばれている。

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