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試される日独友好:ロストックの荒廃する日本庭園

北ドイツの町、ロストックで日本庭園が荒廃しています。今年9月に筆者はたまたまロストックを訪問したわけですが、その光景を見て日本人としてとても残念な気持ちになりました。ツイッターでも報告したわけですが、今回はもう少し深掘りしてみたいと思います。

ロストックの日本庭園

ロストックの日本庭園は市内中心部から少し離れた川沿いの緑地公園に存在します。ここは、2003年に国際園芸博覧会が開催され、各国の庭園文化が展示されたそうです。その後、20年近く経った今では、当時の施設は大半が撤去され、緑地公園となっています。そんな中にこの日本庭園が存在します。

訪問してまず最初に気づくのは、茶屋のような日本家屋の壁一面の落書きです。壁には日本政府が日独の友好が続くことを願って庭園を寄贈した旨が書かれたプレートがありました。落書きはこのプレートにも及んでいます。かつては庭園を説明する掲示物もあったとか。天井を見上げると、穴があいていて老朽化が気になりました。植栽も伸び放題で茶屋を取り囲んでおり、周りは見通しの良い原っぱですが、庭園内は外からの人目に気づきにくい状態になっていました。

激しく落書きされた日独友好を祈念するプレート

世界で荒廃する日本庭園

2017年と少し古い記事となりますが、日本経済新聞は英国で荒廃する日本庭園の事例を取り上げ、世界各地40カ所以上で修復が必要な状態となり、日本政府も支援に動いていると報じています。

日本の国土交通省が支援するこの「海外日本庭園再生プロジェクト」と呼ばれる支援事業は、HPによると令和元年に同じドイツのツァイツという町の日本庭園で修復事業を実施したと報告されていました。

であれば、ロストックの日本庭園は、なぜ荒廃したまま放置されているのでしょう?現地には、日本人や日本ファンはいないのでしょうか?

ロストックのポテンシャル

今回のロストック訪問では、アニメやマンガ人気の実態も見てきました。アニメやマンガファンがイコール、日本ファンではないですが、重なる部分も多いのではないかと思います。

ただ、ロストックではアニメ漫画ファンによるイベント「Anima Haro」も、およそ過去10年にわたり開催されてきたようですが、近年は実行委員会のメンバー交代やコロナ禍などによりイベントは休眠状態にあるようです。ちなみにイベント名の「アニマ・ハロ」は、「アニ」メと「マン」ガ・「ハ」ンザ都市「ロ」ストックの頭文字から名付けられたそうです。

一方で、ロストック市のHPを見ると、各国にパートナー都市を有しているのが確認できますが、日本の町はありませんでした。(このあたりが日独友好を進める枠組みが欠けている原因のひとつかもと思いました)

ロストックにも独日協会は存在するので、日本人との交流もあるようです。しかし、こういった日本庭園の荒廃ぶりを把握しているのか、それとも把握しているが何も行動していないのか、状況はよく分かりません。

いずれにせよ、ロストックという町は、今でも日本との関係はあると言ってよいと思います。

ピンチをチャンスに?

最後に、問題を改善する方法について考えてみたいと思います。始めに言っておきますが、これはロストックの人たちが決めることでロストック市民でもない外部の筆者がつべこべ言うことではないという点です。しかし、オタク文化による日独交流に携わっている筆者としては、何かしら改善すればよいのになと思うわけです。

そこで提案してみたいのは、プレートの清掃アクションです。もちろん公園を管理する公社や町と連携する必要がありますが、実施すれば現地の日本ファンや邦人が一緒に交流する機会になるのではと思うわけです。こういった活動を通じて、荒廃ぶりがより認知されてさらなる行動につながるのではないでしょうか。

例えば、天井の修復や植栽の手入れなどは、素人作業では限界があります。そうなると、先に挙げた日本政府の支援事業なども活用してみてもいいのかもしれません。

おそらく欠けているのは、日本庭園の荒廃を憂えて声を上げる現地の人なのかもしれません。逆にいうと、誰かが行動を起こせば、状況は一挙に改善する可能性もあるということです。

いずれにせよ、日本庭園の荒廃という「ピンチ」を、現地での日独交流を促進させる新たな「チャンス」として活用してみてはと思った筆者でした。

皆さんはどう思われますか?


※写真はすべて筆者が2022年9月中旬の訪問時に現地で撮影

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