連立新政権発足でどうなる?イタリアのこれから

五つ星運動と「同盟」が組むことに合意し、マッタレッラ大統領はコンテ氏を首相に指名した。脆弱なイタリア政権が漸く出航となるが、最初から波は高い。

 第一に、五つ星運動と「同盟」は戦略を少しずつ変えながらも、基本はユーロ懐疑派、ポピュリズムの流れにあること。第二に、それがゆえ、積極財政に乗り出すこと。現時点で提案されている減税と最低所得保証という案は単独でも700億ユーロ、GDP比4%のコストに相当する。第三に、首相指名に先だって政策綱領が作成されるのは順番が違い、非伝統的であること。政策ガイダンスを公表する任務を首相に与えている憲法の精神にも反する。第四に、こうした流れを受け、格付け機関は格下げを模索し始めたこと。改革プロセスのとん挫と財政赤字の深刻化を受けて格下げされる可能性が出て来ている。

 ただし、一方で、イタリアのソブリンリスクが過度には高まらないであろうと考えることも可能だ。第一に、大統領の権限行使により、二党の政策綱領などについても、調停努力がなされる可能性があること。イタリアでは大統領は形式的な立場にあるが、政権樹立においては憲法上重要な役割を担っており、首相を指名した上でその首相とともに閣僚を任命することを委託されている。第二に、イタリアの経済成長が堅調に推移していること。経常収支はGDP比3%の黒字に改善しており、景気の良さが政権混乱期を下支えし得る。

 放漫財政に舵を切る政策と二党合意の脆弱性を考えると、この先長期にわたりリスクプレミアムが残る可能性がある。ヘッドライン・リスクもしばらく残るため、市場のボラティリティも高いことが予想される。ただし、深刻なシステミック・リスクやユーロ圏崩壊リスクに繋がるものでもない以上、まだ平衡感覚を失う必要はない。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30764690R20C18A5910M00/

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