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交渉担当者にとって残っているのが3つの重要な問題(公平な競争環境へのコミットメント、合意のガバナンス、漁業権)であった。この漁業権に、イギリスは大きな譲歩をしたことになり、かなりの進展となる可能性が出て来たと言える。

合意は英国と欧州にとって、重要である。合意できなければ、双方にとって短期的に政治的なコストがあることに加え、特に英国では経済的混乱が生じかねない。さらに、合意なきBrexitは限定的な貿易協定が締結された場合と比較しても、英国の長期的な潜在成長率を低下させる可能性が高い。加えて、「北アイルランドに関する議定書」の適用がより難しくなり、連合王国に対する圧力を高めるだろう。スコットランドの独立の話が燻り続けることもあり得る。

しかし、あと9日しかない。合意期限をまたも延長するのか。理論上は、移行期間を延長できるいくつかの方法がある。①離脱協定の修正、②新たな移行期間の設定、③合意の一環として実施期間を設ける、というあたり。ただし、①は2020年7月1日までに判断を下していなければならなかったし、②は法的・政治的ハードルが高い。③は合意のとりまとめが必要だが、もっとも混乱が少ないように見える。今回の漁業権の譲歩は英国側のその意思かもしれず、③となる可能性が出て来たと見ることもできるのではないか。

もっとも、実際には、発生し得る法的・政治的制約を踏まえ、かつ、12月31日の期限は自ら定めた期限であることからそれ程簡単に延長できる話でもない。9日間で、双方にとり、もっとも打撃の少ない選択ができるか。EU側の首席交渉官バルニエ氏は今週中の合意可能性を示唆もしているが、正念場であることに変わりはない。


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