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たいした「原体験」がなくたって、前には進める。

先日、ある大学で講演をさせていただきました。聴講してくださったのは大学1年生、その数なんと400人以上!いやー、ありがたい!本当はリアルに空気を感じてやりたかったけど、オンラインなのは残念でした。でも、それだけ起業家っていうものに対して若い方の興味も高まっているということなんでしょうね。

かく言う私自身は起業してもうすぐ丸6年が経過するのですが、いまだに「起業家」と呼ばれることに何となく居心地の悪さを感じるのですが、まぁ貴重な機会なので、事業内容を紹介しつつ、起業前からの私の経歴なども交えて大学生の皆さんとお話をさせていただきました。その中で「私にはたいした原体験がない」ということを伝えたところ、これに反応を示してくれた学生さんがとても多くいらっしゃいました。

お話ししたのは、私は超フツーのキャリアだということです。取材していただくときとか、なんとなくそれっぽく話しますけど、冷静に私のキャリアを話すと、「新卒で入った会社に13年間勤めて、その中でマネジメントに苦労したり悪戦苦闘して、1回転職してうまくいかなくて、起業しました・・・」っていうだけの話です。こんなキャリアの人はきっと五万といるはずです。起業している立場でその話をすると、なんか「原体験」っぽく聞こえちゃうかもしれませんが、なんかすごく普通なんですよね、っていう話。

そうしたら学生のみなさんからは、こんなコメントがありました。

自分の大学生活って何もできてないとか、すごく普通だなと不安を感じています。
起業家の行動力は、必ず実体験が源とされていました。私にはそのような豊富な経験はないですし、ビジョンもあやふやです。
何かに挑戦するとき、将来に役に立つのかと考えて踏みとどまってしまうことが多いです。

いかがでしょう?大学生に限らず、そう感じる社会人の方も多いんじゃないですかね?

でもこれって、そんなに不安を感じたりするような類のものでしょうか?もしかすると、「起業家」とか「起業家精神」とかっていうことが、なんだか大仰に語られすぎてはしないでしょうか?

起業家精神が大事といった話はとても増えていて、それはその通りだと思うのですが、それが語られるときには、「起業家とは強烈な原体験を踏まえて、強い気持ちをもってやっていくべし!」っていうような論調が強いですよね。例えば以下の記事にもそういうことが書かれています。

もちろん、いろいろな経験をなさって、そこから見出された課題意識で大きな事業に取り組まれている方もたくさんいらっしゃいます。そういうことのできる人は、そういうやり方をすればいい。高い視座をもって、力のみなぎった方は本当にすごいなーって思うし、尊敬する起業家の方もたくさんいます。

でも、少なくとも自分には、そういうやり方できないなぁ。だから私は「起業家」と呼ばれることに居心地の悪さを感じるのかもしれません。が、まぁそれでもなんとか6年間「起業家」をやらせてもらっているわけです。

だから、何かを始めるときに、特別な経験がなきゃいけないとか、そこから導かれるビジョンだとか、世界を変える覚悟だとか、そういうものが絶対必要だといわれちゃうと、ちょっと重たいなぁ。そんなものはなくたっていいんじゃないかな、って思うんですよね。とにかく進んでいれば、いずれ、そういうものは自ずと形成されてくるから。

そしてとくに原体験ということに関して言うと、「原体験はもともとみんな持っている」と思っています。あとは、そこにどういう意味づけをするか、というだけの話。例えば私が「13年間お世話になった会社を辞めた」という話も、それだけでは特別珍しい話ではないけれど、「起業してこんな事業をやっている」ということと組み合わさると、なんだか特別な意味を帯びてくるわけです。

つまり、過去の経験っていうものそれ自体にたいして意味はなくて、どういう選択をするか次第で意味は変わってくる。自分が行動するときに、何かその背景に重大な理由がなきゃいけないわけじゃないし、過去は未来によって変えていくことができる。「原体験がー」とか「覚悟が―」とかを悩んでいるうちに、一歩進んでみたらいい。そんな風に思っています。

起業家って世の中に少ないから、逆になんだか「かくあるべし」みたいになりがちですが、「起業家」といったって十人十色。いろんなタイプがいてもいいですよねー?いるんですよー?という想いで(半ば、自己弁護もかねて笑)、この記事を書きました。

冒頭でお話しした大学の講演でも、そんな話をさせていただいたのですが、アンケートにはこんなうれしいコメントがありました。

後から過去の経験に意味を持たせるという考え方があることを知ったので、次から挑戦することへのハードルが少し下がって、一歩を踏み出せそうです。
現時点で一貫した人生プランは持っていませんが、ビジョンはなくても好きなことを少しずつしようというお話を大切にして、じっくりと色々なことに取り組んで生きていこうと思いました。
いつもやっていることと少し違うことをしてみる。少しずつ変わっていけばいいということを知ることができました。

なんだか、嬉しいコメントですよねー。逆にたくさん勇気をもらっちゃいました。学生の皆さん、本当にありがとうございました。

それでは。

追伸、今日は原体験なんて!ってお話をしてみました。自分のやりたいことを今すぐ明確にする必要はないと思うのですが、過去を振り返って「自分は何をしたいのか」っていうことに思いを馳せてみる時間はとても豊かなものだと思っています。ローンディールでは以下のようなワークショップやっています。ご興味があればご覧になって見てください。


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