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宇宙で麻酔が使えない問題

宇宙ステーションでは、麻酔が使えません。つまり、宇宙で怪我をした場合、麻酔なしで手術するか、麻酔ができる環境まで移送してから手術するしかありません。これから宇宙時代を迎えるにあたって、これは大きな課題です。

石北医師がカンブリアナイト18東京にて、そうプレゼンを始めたとき、ああ子どもの頃に思い描いていた21世紀っぽい感じになってきたなあとしみじみ思いました。今回は、この宇宙での麻酔について、簡単ですが、ご紹介したいと思います。

ガス状にした麻酔薬を吸引することによって全身麻酔します。石北さんは、この吸引器の開発に挑戦しています。小型軽量化を推し進めても、宇宙に運ぶためのコストは膨大です。ましてや、使うかどうかわからない吸引器のために、確保できる余地はロケット内にはありません。

そこで、3Dプリンターの活用が考えられました。必要なものを必要なタイミングで製作することができるため、吸引器のためだけではなく、様々な目的のために3Dプリンターを打ち上げるメリットは十分に考えられます。その上で、いざ麻酔が必要という時に、吸引器をプリントすればよい、という考えです。

有人火星探査の時代。もし火星で怪我をしたとして、それから麻酔器を運んでも、怪我人を運んでも間に合いません。しかし、3Dプリンターなら、30分で準備できます。そう言う石北さんは、実際にNASAと共同で実験を実施しています。既に宇宙電送実験および無重力下動作実験に成功しており、米国火星アカデミーによる世界初の模擬火星基地医療シミュレーション「Mars Medics」に公式採用されました。そこに至る詳細は、下記でお読みいただけます。

小児科医の私は目の前でけいれんで苦しんでいる子どもを少しでも早く楽にしてあげたいという夢がありました、と話す石北さん。この活動は、宇宙のみならず地球上でも同じように、遠隔地での医療に革新的な流通革命を起こす可能性があるのではないでしょうか。


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