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ベテラン社員のリスキリングはまず、新しい働き方のスキルから

ベテラン社員に学んでほしいスキルは何か、というのがお題であるが、自分の場合は恐らくすでにベテラン社員と(他人から)目される年齢に達しているので、自分たちの年代がどんなリスキリングをするべきなのかという観点で考えてみたい。

一般的にベテラン社員ないしはシニアが不得意とすると言われている ITスキルを身につけるといったことはすぐに思い浮かぶ。もちろんそれは少なくても最低限のレベルでは必要なことなのだが、こうしたスキルは時代の変化とともに陳腐化も早く激しく、一般的にシニア社員・ベテラン社員がスキルを習得するのにかかる時間が若い社員よりも多いことを考えると、こうしたものの習得に優先的に時間を割くことは、組織全体として見て必ずしも有効なものとは言えない可能性がある。シニアが頑張って最新の IT に関する知識やスキルを身につけるよりも、若い人がそれをすばやく身につけて組織全体として対応する方が早くて効率的だろう。

むしろベテラン社員が最優先で身につけるべきなのは、これからの「新しい働き方」であると思う。それができなければ、いくら IT の知識があっても有効に生かせないだろうし、ベテラン社員は「上司」と言われる立場にあることが多いであろうことを考えれば、 ポテンシャルを秘めた「部下」=若い世代の能力を存分に発揮してもらうことも難しいからだ。

ひとくちに「新しい働き方」といっても多様な側面があるが、昨今よく取り上げられている点でいえば、リモートワークや在宅勤務に慣れることは求められるリスキリングの筆頭ではないだろうか。緊急事態宣言解除にともなって、出社比率を高める方向に動く企業とこれまで通り維持する企業に2分されてきているというが、出社を増やそうとする背景に、経営陣を含むベテラン社員の順応性が低い、ということはないだろうか。

いずれにしても、在宅やリモートの勤務がゼロに戻ることはない、と考えてよいだろう。そしてそのような執務環境のもとで、上司として部下の能力を最大限に引き出すことにベテラン社員は新たなスキルが求められることになる。今後「ジョブ型雇用」が導入されるといわれる中で、これまでのメンバーシップ型で採用されその前提で組織の中で生きてきたベテラン社員は、ジョブ型雇用の採用で入ってくる若い人達を理解し歩調を合わせ、また全社的にベテラン社員も対象となってジョブ型に変わっていくであろう人事制度に対する適応もしていかなければならない。

「上司」はこれまで、一定以上の職階であれば「管理職」ともいわれ、部下を管理する発想で役割が組み立てられて、管理業務が上司としての主な仕事であったと言えるかもしれない。

しかし、組織の中でこの管理職の仕事が、「管理のための管理」になってしまい、部下である若い人たちの重要な発想やアイデアを活かす方向に行くよりは、トップを含めた上司たちが決めた、時に時代の流れに沿っているとはいえない方向性に向かって組織が動いていくための管理をしてきたという面が否定できないように思う。そのひずみが組織の競争力や生産性を落としたり、従業員にメンタルの負担を強いてきた面があるのではないだろうか。

「管理職」という呼称の是非については、下記の記事でも指摘されている。記事中では「経営職」という呼称がふさわしいのではと提言されているが、いずれにしても「管理職」という名称がミスリードしてきた部分があることはその通りではないだろうか。

新しい働き方の時代では、上司のあり方は、部下=若い社員が掴み取っている時代の流れに対する感覚と新しいITなどのスキルを最大限に活かせるように方向付けていくこと、それが上司の主要な業務になっていかなければいけないのだと思う。

このリスキリングについては、すでに固まった知識の体系があるわけではなく、専門の教育機関で一定の講習を受ければ身につく、という性質のものではない。少なくても当面は、誰もが手探りをしていかなければならないことになるだろう。その意味では難易度の高いものである。

しかし、ベテランである以上は、単純に分かりやすいスキルを身につけるといった若い時の学習・習得とは異なり、複雑でつかみどころのないものを、これまでの経験を活かしながら体得していけることにこそ、年齢を重ねたことの意味・価値があるはずだと思う。

ベテラン社員からすれば、ようやく肩書もついてラクが出来ると思っていたのに...と思うかもしれないが、人生100年時代と言われるこれからは、組織で役職を解かれそして定年になって以降の長い期間を有意義に過ごしていくためにも、こうしたスキルを身に着けておくことは、働き続けるにあたっても今後の人生の選択肢をひろげるものになり、決して無駄にならないはずだ。

#日経COMEMO #ベテラン社員に学んでほしいスキル

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